[I-OR16-03] 当院におけるTCPC術後の乳び胸の治療と効果について
キーワード:TCPC術後, 乳び胸, 胸管結紮術
【対象と方法】2008年1月から2018年4月までに当院で施行したTCPC 297例を対象とした。乳び胸の診断は胸水の外観または胸水検査(細胞数>1000/μL かつリンパ球分画>80%)で行い、乳び胸発症群と対照群(乳び胸非発症群)に分け、術前・術中因子及び乳び胸の治療とその経過にについて診療録を後方視的に参照し検討した。【結果】TCPC術後の乳び胸を36例(12.1%)に認めた。乳び胸発症のリスクファクターとしてBDG後の胸水貯留(胸腔穿刺・胸腔ドレーン留置を要したもの)を認めた(乳び胸群 vs対照群:16.6% vs 6.5%; p=0.04)。治療に関して、保存的治療(水分制限、脂肪制限、ステロイド、オクトレオチド)に奏功しない症例(難治性乳び胸)に対して側副血行路塞栓を8例、胸膜癒着術を4例、胸管結紮術を2例に施行した。治療期間の中央値は6日であり、Heterotaxyでは有意に治療期間が長かった(15日 vs 4日; p=0.042)。再発を11例(30.5%)に認め、TCPC術前のカテーテル検査にて高いSVEDP(7.5mmHg vs 4.5mmHg; p=0.02)と高いPAP(9.5mmHg vs 8mmHg ; p=0.03)の症例では再発が有意に多かった。保存的治療のうちオクトレオチド群、ステロイド群、併用群で治療期間、再発に関して有意差はなかった。難治性乳び胸はHLHSで有意多く(62.5% vs 14.2%; p=0.013)、側副血行路塞栓を行った8例のうち5例は奏功し、カテーテル後の治療期間の中央値は5日であった。また胸管結紮術を行った2例とも治療は奏功し、術後の治療期間の中央値は8日であった。術後遠隔期のPLE発生は乳び胸発症群で有意に多かった(乳び胸群 vs 対照群:8.3% vs 0.7%; p=0.01)。【結語】乳び胸の治療に関して保存的療法は治療効果に差を認めなかった。難治性乳び胸はHLHSで有意に多く、カテーテルによる側副血行路塞栓や胸管結紮術は難治性乳び胸の治療に効果的であった。