[I-OR17-02] Marfan症候群および類縁疾患の遺伝学的診断における次世代シーケンスの有用性
Keywords:次世代シーケンサー, Marfan症候群, FBN1遺伝子
【背景】Marfan症候群および類縁結合織病の発症には10を超える多遺伝子が関与し、また検出される変異型も多様で、従来のサンガー法を用いた解析には限界がある。変異型-表現型相関のデータが蓄積し、ゲノム情報に基づく個別化医療の実現に最も近い心血管病である本疾患群において、遺伝学的診断精度の向上は重要課題である。 【方法】サンガー法でFBN1異常が同定されない、結合織病外来フォロー中の35症例33家系を対象とした。全例がaortopathy(and/or家族歴)を有し、Marfan症候群および類縁結合織病が強く疑われる症例であった。17例(49%)は改訂Ghent基準を満たすMarfan症候群、残り18例(51%)は確定診断に至らない結合織病としてフォローされていた。次世代シーケンス(NGS)解析により変異型の確定を試みた。 【結果】16家系(48%)で変異型が確定された。FBN1異常を10(in-frameエクソン欠失をきたすスプライシング変異5、in-frameエクソン欠失1、nonsense変異4)家系に認め、そのうち9(90%)の変異が予後不良型変異(ハプロ不全或いはcb-EGF領域)であった。また、他遺伝子の異常(COL3A1、TGFBR1、TGFBR2、SKI)を6家系に同定し、それら全例が確定診断に至らない結合織病としてフォローされていた。病的変異の同定により新たに8症例に診断を確定でき、NGS解析後の確定診断頻度は49%から71%に向上した。【考察】本研究のFBN1異常の大多数を予後不良型変異が占めたように、aortopathy有病率の高い厳選されたコホートにおいて、エクソン欠失など特殊な変異型の検出に寄与するNGS解析は有用である。さらにNGS解析は多遺伝子解析を強みとし、症候学による臨床診断の限界を補完することで、本疾患群の臨床に広く貢献する。