[I-P02-01] 正中アプローチによる体肺動脈短絡術の術後成績と再手術の危険因子の検討
キーワード:体肺動脈短絡術, 術後, 動脈管
【背景】チアノーゼ性先天性心疾患に対する体肺動脈短絡術において、肺の圧排をせずに肺動脈のより中枢側への吻合が可能で、肺動脈狭窄に対する同時形成や側副血行路の発達抑制を見込めるため、当院では胸骨正中切開によるアプローチを行っている。当院での体肺動脈短絡術の成績や術後経過に影響を及ぼす因子を検討した。【方法】2013年9月-2018年8月の期間で体肺動脈短絡術を行った18例を対象とした。シャントは3.0-4.0mm ePTFE graftを使用し、全例胸骨正中切開アプローチで行われた。【結果】手術時年齢は平均50日(13-150日)、手術時体重は平均3.8kg(2.6~5.0kg)であった。診断は三尖弁閉鎖症 4例、両大血管右室起始+肺動脈狭窄 5例、ファロー四徴症 3例、肺動脈閉鎖症 4例、単心室症2例であった。死亡症例はなくシャント閉塞症例は4例(22%)。シャント閉塞は術中にPDAを結紮せず帰室した症例で優位に多かった(p<0.05)。術後に肺血流過多となった症例は1例(5.5%)あり、シャント血流を制限するために術翌日にシャントのClippingを要した。開胸のままICUに帰室、または術後ICUで開胸した症例は4例(22%)あり、人工心肺使用、帰室時の高乳酸血症、帰室時の高FiO2と有意に関連していた(p<0.05)。また、有意差はないものの開胸群では、手術時間が長く、術中のFFP輸血量が多い傾向にあった。【考察】正中アプローチでの体肺動脈短絡術のシャント閉塞には、術中にPDAを結紮しないことがリスクであると示唆された。術中酸素化不良によりPDAを結紮できない場合は、術中にシャントの再吻合、graftのサイズアップなどを検討する必要があると考えられた。また、人工心肺を要し、手術時間が長い症例や輸血や術後に高いFiO2が必要になる症例、または帰室時に高乳酸血症を示す症例は、開胸帰室または再開胸のリスクが高いことが示唆された。