[I-P02-06] 重度の呼吸不全を呈した乳児特発性僧帽弁腱索断裂に対して左心ベント併用VA-ECMO導入後に僧帽弁置換術を行った一例
Keywords:ECMO, 僧帽弁腱索断裂, 左房ベント
【背景】高度の循環不全に対する経皮的心肺補助(ECMO)は、乳児例においても比較的迅速葛容易に導入できる有用なデバイスである。しかし、ECMO中に高度の肺うっ血を呈し、心不全に対する治療や改善後でも呼吸不全によりECMOからの離脱に難渋する場合がある。急性僧帽弁閉鎖不全による循環不全を呈した乳児に対し、左心ベント併用ECMOを導入後に僧帽弁置換術を施行し救命した症例を経験したので報告する。【症例】9か月の男児、体重8.8kg。不全型川崎病で他院入院中に突然ショック状態となった。心臓超音波検査にて僧帽弁腱索断裂による急性重症僧帽弁閉鎖不全症と診断され、当院に転院搬送となった。高度のアシドーシスを伴う循環不全を呈しており、ICUにて右頸部よりVA-ECMOを導入した。尿の流出はあるものの、急速に肺うっ血が進行し、VA-ECMO導入30時間後には肺胞出血を伴うようになった。僧帽弁閉鎖不全は、前尖全体が逸脱するもので人工弁置換となる可能性があったが、この時点で小口径人工弁を入手する目途がたっていなかった。そのため、肺うっ血を軽減する目的で胸骨正中切開下に右上肺静脈より10Frのベントチューブを左房に挿入した。チューブは脱血側の側枝と接続し、左心系の減圧を行った。肺うっ血は改善し、肺胞出血も減少した。左房ベント併用17時間後に人工弁が到着し、僧帽弁修復術を開始した。前尖の2/3を支配する前乳頭筋由来の腱索が断裂していた。人工腱索を用いた形成を行うも逆流の制御が困難であったため、16mm ATS弁で弁置換術を施行した。術中に人工心肺離脱が可能で、術後第5病日に人工呼吸器を離脱した。上室性頻拍に対してアミオダロン内服を要したものの、第29病日に退院した。【まとめ】ECMO中に左房ベントを併用することで、肺うっ血を減じ肺傷害を最小限とすることで僧帽弁置換術により循環不全改善後に早期に人工心肺からの離脱が可能であった。