[I-P04-03] 混合型総肺静脈還流異常症修復術後の遺残垂直静脈により症候性門脈体循環シャントをきたした1例
キーワード:総肺静脈還流異常症, 遺残垂直静脈, 症候性門脈体循環シャント
【はじめに】 下心臓型総肺静脈還流異常症(TAPVC)に対する心内修復術では、肺静脈閉塞のリスクを考慮して、垂直静脈を処理せずに修復する術式を選択する場合がある。今回、遺残垂直静脈により症候性門脈体循環シャントをきたした症例を経験したので報告する。【症例】 無脾症、単心室、TAPVC (混合型;右肺静脈2本は左上大静脈に、左肺静脈2本は門脈に還流)の男児。在胎38週1日、体重2518gで出生し、日齢18にTAPVC修復術を施行した。右肺静脈はsutureless法で、左肺静脈はLugones法にて修復し、右垂直静脈は高度狭窄のため、左垂直静脈は自然閉鎖を期待して共に放置し、肺動脈絞扼術を併せて行った。術後4日目より肝逸脱酵素の上昇、凝固能異常、低血糖、高乳酸血症、高アンモニア血症を認めた。腹部エコーで、門脈血流の途絶や、門脈から遺残垂直静脈を介して心房に流入する血流を認め、遺残垂直静脈による症候性門脈体循環シャントと考えられた。これらは対症療法で改善を得ることができ、術後25日目に抜管、その後も症候化することなく術後69日目に退院となった。術後5ヶ月および8ヶ月時の心臓カテーテル検査で心房圧の上昇を認め、門脈体循環シャントによる容量負荷の可能性も考えられた。遺残垂直静脈の閉塞試験で門脈圧は20mmHgと許容内であり、1歳時に開腹下シャント血管結紮術を計画した。【考察】 無脾症候群で、門脈に還流する異常肺静脈を有する混合型TAPVCでは、その垂直静脈を残存させることによって、本症例のような門脈体循環シャントに伴う合併症をきたすことがある。今後、これを念頭においた治療戦略の構築及び垂直静脈が自然閉鎖しにくい症例の予測因子についての検討が必要である。