第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

心筋・心膜疾患

ポスターセッション10(I-P10)
心筋・心膜疾患 1

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:廣野 恵一(富山大学医学部 小児科)

[I-P10-05] 若年肥大型心筋症の突然死リスクを見直す

山澤 弘州, 武田 充人, 泉 岳, 佐々木 理, 谷口 宏太, 永井 礼子, 藤本 隆憲, 辻岡 孝郎 (北海道大学大学院医学研究院 小児科)

キーワード:肥大型心筋症, 突然死, リスク層別化

【背景】突然死の原因疾患に肥大型心筋症(HCM)がある。2018年ESCの突然死リスク計算式(ESCDRC)が成人日本人(平均年齢66歳)にも適用出来る事が報告された。【目的】HCMの突然死リスクについてESCDRCの適用も含め、小児科症例でも再検討する。【対象と方法】対象は当科受診歴のあるHCM23例で心エコー、MRI検査データと突然死関連イベント(SCDE)の内容を抽出した。ESCDRCは便宜上16歳以下は16歳として、また症候群関連HCM4例にも使用した。ESCDRC値は4%/5年を境界としてSCDE予測と有意な関連があるかを評価した。更に心室頻拍/細動(VT/Vf)例でイベント前の壁厚増大、無脈性電気活動(PEA)例で左房径拡大の印象あるため、壁厚の変化率及び左房径係数(LADI)とSCDEの関係をみた。MRIでは左室心筋重量係数(LVMI)とSCDEの関連を見た。値は平均±SDで表記した。【結果】対象年齢は17.9±11.5歳。SCDEはVT/Vf4例、房室ブロック(AVB)1例、PEA2例、HCMとの関連不明な心肺停止1例。SCDE陰性群と陽性群のESCDRC値は2.0±0.7 v.s. 2.6±1.0(%/5年)でp=0.4とSCDE予測と有意に関連があると言えなかった。VT/Vf群とSCDE陰性群の壁厚の変化率は2.2±0.3 v.s. 0.4±0.3(mm/年)でp=0.02で有意差を認め、LVMIは114.7±22.8 v.s. 76.4±35.6(g/m2)でp=0.04で有意差を認めた。VT/Vf群を予測するカットオフ値は1.9mm/年の壁厚増大だった。PEA群とSCDE陰性群のLADIは49.8±7.3 v.s. 23.0±6.7(mm/m2)でp<0.01で有意差を認めた。【考案】本研究ではESCDRCによるリスク分類は困難だった。VT/Vfに関しては急な壁厚増大がリスクになる可能性が示唆され、SCDE陰性群に比較しMRIでのLVMI高値も、変化率は解析出来なかったがこれを支持するものと考えられた。ESCDRCはICD植え込みの適用度を数値化するが、これに含まれる左房径は致死性不整脈とは異なる病態をも反映している可能性も示唆された。本研究では限界も多くレジストリの利用などが望まれる。