[I-P11-01] 心形態異常を伴う左室緻密化障害2症例における,乳児期の治療戦略
Keywords:心筋緻密化障害, 乳児心不全, 肺動脈絞扼術
【背景】左室緻密化障害(LVNC)は,Ebstein奇形や心室中隔欠損症など心合併奇形を認めることがあり,循環動態に大きな影響を与える.幼少期発症のLVNCは予後不良で,幼少期の合併奇形に対する治療戦略に指針はない.心合併奇形を持つLVNCに対する責任遺伝子が同定された心不全を呈した乳児2例に対し,外科的治療を含めた治療経験を報告する.【対象】症例1は3ヶ月男児,心室中隔欠損症,心房中隔欠損症,三尖弁狭窄,右室低形成,右上大静脈欠損,左上大静脈遺残,左室緻密化障害.症例2は1ヶ月男児,心室中隔欠損症,左室緻密化障害.共に診療録から後方視的に検討した.【結果】症例1:月齢3ヶ月時に心室中隔欠損症などに対する外科的介入を目的に当院紹介.心不全症状は顕著で,術前検査でLVNCが疑われた.カテーテル検査では左室拡張末期容積(LVEDV) 220%N,駆出率(LVEF) 78%,肺体血流量比(Qp/Qs) 4.3であり乳児期の人工心肺を用いた心内修復術を避け,肺動脈絞扼術(PAB)を選択.心収縮力が維持されていることを確認しながら2回に分け調整した.術後,心不全所見は改善.1歳10ヶ月時にone and a half repairを施行.術後7ヶ月後のカテーテル検査ではLVEDV 198%N, LVEF 59%と心拡大は持続しておりLVNCの所見は持続している.遺伝子検査でACTC1異常が確認された.症例2:生直後より心不全所見を呈し集中治療を要した.月齢1ヶ月で当院転院.諸検査でLVNCが疑われた.月齢3ヶ月のカテーテル検査でLVEDV 294%N, LVEF 50%, Qp/Qs 2.0でありPABを施行.術後,心不全所見は改善傾向.遺伝子検査でTNNC1異常が確認された.【考察】2症例とも乳児期発症のLVNCで心室中隔欠損を伴い,肺血流量は増加していた.左心不全がQp/Qs増加の増悪因子であったと考える.1歳未満で心不全所見を呈した症例において予後は特に不良とされている為,低侵襲な介入としてPABを施行し,循環動態を整えたことで乳幼児期を経過出来たと考える.