[I-P11-03] 肺動脈絞扼術後に錯綜配列を伴う右室心筋肥厚が出現したが、既報の遺伝子変異を認めなかったcomplete AVSD hypoplastic aortic archの一例
Keywords:心筋肥厚, AVSD, 心不全
背景:肺動脈絞扼術が心筋を肥厚させることは動物実験などで示されている。しかし心筋肥厚を病理学的に証明し、遺伝子変異の関与も併せて考察している報告は見当たらない。症例:0歳男児 complete AVSD(Rastelli type A) hypoplastic aortic arch PDA経過:日齢20に心雑音を契機に当院受診、上記のように診断し二心室修復を目指すこととした。大動脈弓は第3分枝が出た後からLong segmentに細かったが、上下肢の血圧差がないことから介入しない方針とした。心不全症状が出現し日齢60、体重3.6kg時に肺動脈絞扼術を施行(周径3.6 +19.4=22mm)したが、心不全症状の改善に乏しかった。絞扼部の内径が4.5mmと比較的緩い絞扼であったことが症状遷延の理由の一つと考えた。また徐々に右室の心筋肥厚と右室内腔の狭窄所見を認めるようになった。2回目の肺動脈絞扼術を検討したが、更なる右室心筋肥厚の可能性があり断念、低体重でもAVSD repairが可能な施設に搬送した。日齢180にAVSD repairとRV muscle resectionを施行。Archへの介入は行わなかった。その際の右室心筋の生検にて錯綜配列が確認された。術後の経過は良好で体重増加も得られるようになり退院した。心エコー検査では右室の心筋肥厚の進行がないことを確認、心筋症の遺伝子検査で既報の心筋症の遺伝子変異に該当する変異を認めなかった。考察:既存の遺伝子変異は確認されないが、肺動脈絞扼術後に錯綜配列を伴う心筋肥厚を呈することが示された。本症例では大動脈の低形成も伴っており、肺動脈絞扼術後に両心室の後負荷が強くなったことが心筋肥厚に関連していると考えた。またrepair後に肥厚の進行を認めないことからこの肥厚は可逆的なものと考えた。結語:肺動脈絞扼術は可逆的な心筋肥厚を起こし得る。肥厚が進行した場合は心内修復術または次段階の姑息術を早急に検討する必要があり、それが可能な施設への搬送を考慮すべきである。