[I-P11-04] 心臓腫瘍以外の症状を認めないTSC1遺伝子の部分欠失を認めた兄妹例
キーワード:心臓腫瘍, TSC-1, 兄妹例
症例は第4子で女児、32週0日破水あり、近医より当院に母体搬送され32週5日経膣分娩にて1820gで出生した。入院時心エコー検査にて心室内に多発腫瘤を認めた。最大で15×8ミリ程度の腫瘍が主に右室腔内を占拠し、経過中一時右室内腫瘍間で軽度の乱流を認めたが、右室流出路の血流は保たれており、血行動態に問題はみられなかった。左室側はAo弁基部にも5ミリ程度、左室腔にも数個の腫瘤がみられたが、流入・流出路ともに血行動態に問題みられず、自然縮小を期待して注意深く経過観察の方針とした。経過中、右室内多発腫瘍の間隙の狭小化が観られたが、修正満期の時期をピークに、生後1か月の時点では顕かに腫瘤の縮小傾向を認めた。臨床経過より結節性硬化症に伴う多発性心臓横紋筋種が疑われたが、心臓腫瘍以外に皮膚症状、神経症状などの臨床所見を認めなかった。問診にて第2子男児にも心臓腫瘍があり、他院で経過観察されていることが判明。兄は3歳4か月になるが、左室心外膜と心室中隔右室側に5ミリ程度の縮小傾向のある腫瘤を認める以外、発育発達も良好でその他の臨床症状はみられなかった。家族性に同様の症状がみられたことより、ご両親及び症状のある次男、患児の遺伝子の網羅的解析を行った。結果TSC1に30.5kbのExon16-19の部分欠失が兄と患児に認められた。両親に同一部位の欠失はみられず、父親の生殖細胞モザイクに生じた欠失を通して兄と妹に伝搬したものと予測された。結節性硬化症の責任遺伝子はTSC1およびTSC2が知られているがTSC1の異常に伴う表現型は比較的軽症であることが言われている。一般的に合併症としてみられる心臓腫瘍は胎生満期に最大径となり、生後自然退縮傾向となる。本症例は早期産であり、修正週数に伴う変化が予測され、腫瘍のバイオマーカーになりそうなホルモンなどを前後で測定したが、有意な変化は見られなかった。