[I-P12-02] Trisomy18症例に対する治療方針の検討 ~地方病院の立場から~
キーワード:Trisomy18, 地方医療機関, 在宅医療移行
【背景】近年Trisomy18(T18)児に対する手術等の積極的治療の報告が本邦を含め散見されるが、外科治療可能な施設は限られており、特に地方病院でできる治療内容は制限される。当院は総合周産期母子医療センターを有し県内で新生児集中治療の一端を担っているが、外科治療ができず他院へ依頼せざるを得ない。そして、当院では歴史的にT18児に対しては積極的外科治療をこれまで勧めていない。【目的】当院におけるT18児に対する治療が生存率や在宅移行率に及ぼす影響を調べる。【対象と方法】2003年から2018年までの15年間に当院NICUに入院したT18児14例(男4)を対象とし、過去の報告との比較を行った。【結果】在胎週数および出生体重の中央値はそれぞれ40(27-43)週、2031(471-2558)g、このうち心疾患および消化器疾患の合併はそれぞれ14例(100%)、3例(21%)であった。生存日数の中央値は73(2-4663)日で、1年以上の生存は3例(21%)、生存退院は6例(42%)で在宅移行期間は中央値193(70-304)日であった。治療内容では、心疾患の外科治療は14例中0例(0%)で、消化器疾患の外科治療は3例中1例(33%)であった。【考察】当院での外科治療実施数は極めて低かったが、1年生存率は過去の自然歴の報告とほぼ同等で、在宅移行率も有意に劣ることはなく全例1年以内に達成していた。しかし、近年のT18に対する外科治療の報告からは、短期生存率や在宅移行率の観点から内科治療の限界を感じざるを得ない。当院での院内死亡例のうち、高肺血流性心不全や肺高血圧が死因である思われる症例は少なくとも5例(36%)存在し、外科治療を含む治療方針の再検討が必要と思われる。ただし、外科治療のためには遠方への転院が必要で、地理的な問題も積極的治療を勧めにくい要因の一つである。児の全身状態やその他合併症に加え、移動のストレスや家族と離れるなどの転院のデメリットも考慮し総合的に判断すべきである。