第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

染色体異常・遺伝子異常

ポスターセッション13(I-P13)
染色体異常・遺伝子異常 2

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:上砂 光裕(日本医科大学多摩永山病院 小児科)

[I-P13-04] RIT1変異陽性Noonan症候群にみられた、リンパ管異常に伴う合併症の治療経験

水野 雄太, 中野 克俊, 中釜 悠, 浦田 晋, 朝海 廣子, 中川 良, 平田 陽一郎, 松井 彦郎, 犬塚 亮 (東京大学医学部 小児科)

キーワード:Noonan症候群, RIT1, リンパ管異常

【背景】Noonan症候群(Noonan syndrome; NS)では、リンパ管異常に伴う合併症がしばしば認められる。胎児期にはnuchal translucencyといった軽微な異常から、致死的胎児水腫のような重度合併症まで、また周産期以降にも乳び胸やリンパ浮腫が問題になる。
【症例】在胎26週に入り胎児体重増加、羊水過多を指摘された。在胎26週6日、胎児水腫、羊水過多の増悪により子宮収縮が出現し、同日、帝王切開によって出生体重1296 g(99.7%ile、+2.7 SD)で出生した。広範な皮下浮腫、乳び胸腹水による呼吸不全に対し積極的な蘇生(人工呼吸管理、胸腔ドレナージ、ステロイド治療)を要したが、集学的治療が奏功し2ヶ月ほどの経過で呼吸療法から離脱した。心臓超音波検査で肺動脈弁狭窄、両心室肥大と診断され、周産期の異常所見、顔貌(広い前額、眼間開離、低位耳介)の特徴とあわせ、背景疾患にNSが疑われた。圧較差60 mmHgの肺動脈弁狭窄に対し、6か月齢時に経皮的弁形成術が行われたが、異形成の強い肺動脈弁への有効性は乏しく、10か月齢時に外科的弁形成術を受けた。術後リンパ漏の懸念から、心嚢、縦隔に加え左右胸腔にもドレーンが挿入され周術期管理が行われた。ICUを退室後、一過性に心嚢液貯留がみられたが、中鎖脂肪酸トリグリセリドミルク中心の栄養やアスピリン治療の効果もあり、大きな合併症に繋がること無く経過した。遺伝学的解析でRIT1(NM_006912:c.T244G:p.F82V)変異が同定され、NSの診断が確定した。
【考察】2013年にRIT1がNS解析対象遺伝子に加わって以降、リンパ管異常の合併がRIT1変異陽性例に多く報告されている。重症胎児水腫や乳び胸を認めた場合、RIT1変異陽性Noonan症候群の検索は診療上重要であると同時に、今後の重症度分布を変異型別に再定義する重要な情報になり得ると考えられた。