[I-P13-05] 稀なHRAS遺伝子変異を有し, 新生児期に肥大型心筋症と難治性の上室性頻拍を呈したCostello症候群の1例
キーワード:Costello症候群, 肥大型心筋症, 上室性頻拍
【はじめに】Costello症候群は原がん遺伝子であるHRAS遺伝子の変異に起因する稀な疾患である.特徴的な顔貌や精神運動発達遅滞,悪性腫瘍などを呈し,循環器症状として肺動脈弁狭窄症,肥大型心筋症,頻脈性不整脈などを合併する.肥大型心筋症は悪性腫瘍と並ぶ本症の重要な予後規定因子であるが,多くは乳児期から幼児期にかけて診断され,新生児期に診断されることは少ない.【症例】日齢0の男児.胎児期に過大児傾向,羊水過多,胎児頻拍を認めていた.在胎28週3日に胎児徐脈のため緊急帝王切開で出生した.出生体重1,818 g.酸素化不良のため生後1分ほどで気管内挿管し人工呼吸管理を開始した.出生時より両室肥大と上室性期外収縮,全身の浮腫を認めた.日齢2に胸腹水が出現し,血漿成分の血管外漏出のため血圧の維持に多量の新鮮凍結血漿を必要とした.日齢18に血圧低下を伴う心房頻拍を認めたためランジオロールを導入した.一時的に頻拍の改善を認めたが,日齢24よりコントロール困難な心房頻拍が再発し,血圧低下,換気不全のため日齢29に死亡した.経過中に心合併症や浮腫などの症状から本症やNoonan症候群などのRAS-MAPK症候群を疑い遺伝子検査を行い,HRASエクソン1にc.35_36delGCinsTT(p.G12V)ヘテロ接合体変異が同定された.【考察・結語】Costello症候群の約80%にHRAS遺伝子c34G>A(p.G12S)変異を認め,今回の変異は全体の約1%とされる.これまで7例が報告されており,出生例全てに心筋の異常を認め,1例を除く全例が生後2か月以内に死亡していた.Costello症候群は稀な疾患ではあるが,遺伝子変異の種類によっては新生児期から重篤な合併症を来し急激な経過を辿ることがある.特徴的な所見から本症を疑い遺伝子検査を施行することが診断および予後予測につながると考えられる.