[I-P19-03] 母体抗SS-A抗体による先天性完全房室ブロックと房室副伝導路を合併し房室回帰性頻拍を呈した乳児の一例
Keywords:先天性完全房室ブロック, 抗SS-A抗体, 房室回帰性頻拍
【背景】母体抗SS-A抗体による先天性完全房室ブロック(ccAVB)及び房室副伝導路(AP)による房室回帰性頻拍(AVRT)を呈する新生児の報告はあるが両者の合併は少ない。【症例】生後2か月女児。在胎33週まで妊娠経過異常なし。34週1日母が胎動減少、胎児超音波心音計で徐脈に気付き受診、同日緊急帝王切開、2190gで出生。生後HR 70台の2:1 AVB~3度AVB、QRSは下方軸、V1でrSのLBBB(107ms)と北西軸、RBBBが混在。EF=57%だが、BNP=2799.6pg/ml、TnT=5.07ng/mlと高値。その後HR58bpmに低下しDOA開始、70台と漸増し下方軸のV1でrSのQRS優位となり3時間後120台の1度AVB、時折2:1 AVBやblocked SVPCあり。日齢1より1:1房室伝導でQRSはV1でrSのLBBB、ややnarrow(88ms)となったがHR 240台のPSVT散発。日齢4QRS=70msと正常化し、DOA漸減、日齢6BNP=79.6と改善し同日中止したが、日齢6、7もPSVT出現。日齢7母体抗SS-A抗体強陽性と判明。ccAVB既往あり抗不整脈薬は使用せず定期の12誘導・ホルター心電図で慎重に経過観察した。日齢5,7のPSVT時心電図はshort RP’頻拍で逆行性P波あり。日齢8以降HR240以上のPSVT認めず。日齢54定期ホルターでHR210-220のwide QRS(90ms)頻拍あり。啼泣中で、心拍変動あり、頻拍は洞性頻拍とP波が変わらずwide QRSに移行しAPと判断。日齢17定期12誘導心電図ではややwide QRS(93ms)、V1はrSでδ波は不明瞭だがAPを疑い、抗SS-A抗体によるccAVB及びAPによるAVRTと診断した。日齢61EF=60%、BNP=7.1pg/mlと改善。日齢78退院。現時点でPSVT再燃はない。【考察】抗SS-A抗体による房室結節伝導障害により生後はAPを介した房室伝導を呈したが、房室結節・心筋障害が改善し本来の房室伝導も回復したと考えた。AVRT既往はあり今後治療介入適応は検討を要する。ccAVBだが運動時にAPを介して心拍数上昇しPMIを免れるという報告がある一方、抗SS-A抗体による晩期の心筋・房室伝導障害の報告もあり慎重な経過観察を要する。