[I-P22-05] 心房中隔欠損症に対し外科治療を受けた成人例における術前の臨床機能分類および左室機能の検討:カテーテル治療例との比較
キーワード:心房中隔欠損症, 左室機能, 臨床機能分類
【背景】心房中隔欠損閉鎖術の主体は外科治療からカテーテル治療へと移行した.長期にわたる右室への容量負荷は右室機能を低下させるばかりでなく, 左室機能にも影響を与えるとされるが, 不明な点が残る. 【目的】心房中隔欠損症に対する外科治療とカテーテル治療を受ける成人例の臨床機能分類および左室機能を比較検討し, これらに影響を与える因子を検討すること. 【方法】心房中隔欠損症に対し外科治療又はカテーテル治療(各68, 95例)を受けた成人例を対象とした.NYHAによる臨床機能分類と経胸壁2次元心エコーを用いて左室拡張末期容積, 左室駆出率, 右室拡張末期面積, 右室面積変化率, 左房面積, 右房面積, 僧帽弁輪径, 三尖弁輪径, 心房中隔欠損孔の大きさ, Tei index, 僧帽弁あるいは三尖弁閉鎖不全の重症度を測定し, 比較検討した.<結果>臨床機能分類は外科治療群で有意に低下しており, 臨床症状として呼吸障害, 動悸, 易疲労, 胸痛が認められた.左室拡張末期容積, 右室拡張末期面積, 左房面積, 僧帽弁輪径は外科治療群で有意に大きかった.一方, 右房面積, 三尖弁輪径, 心房中隔欠損孔の大きさは2群間で有意差を認めなかった.また, 外科治療群で左室駆出率及び右室面積変化率が有意に低下していた.左室のTei index, 僧帽弁及び三尖弁閉鎖不全の重症度は外科治療群で有意に高かった.三尖弁閉鎖不全の重症度が臨床機能分類悪化の独立因子であり, 手術時高年齢と右室拡張末期面積の拡大は左室のTei index上昇の独立因子であった.【結論】外科治療を受けた成人期心房中隔欠損症の症例では, カテーテル治療を受けた症例と比較して, 治療前の臨床機能分類及び左室機能が有意に低下していた.外科治療を受けた症例では, 三尖弁閉鎖不全の重症度が臨床機能分類の低下に関連していた.加齢及び右室の拡大は左室機能低下に影響を与えていることが示された.