第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスターセッション

一般心臓病学

ポスターセッション25(I-P25)
一般心臓病学 1

Thu. Jun 27, 2019 5:40 PM - 6:40 PM ポスター会場 (大ホールB)

座長:杉山 央(東京女子医科大学心臓病センター 循環器小児・成人先天性心疾患科)

[I-P25-01] 生後に診断され、救命困難であった卵円孔狭小を伴う完全大血管転位症1型の一例

巻 和佳奈1, 古谷 智子2, 中川 良3, 中野 克俊3, 浦田 晋3, 朝海 廣子3, 平田 陽一郎3, 犬塚 亮3, 松井 彦郎3 (1.太田西ノ内病院 小児科, 2.東京都立墨東病院 新生児科, 3.東京大学医学部附属病院 小児科)

Keywords:TGA, BAS, 胎児診断

【背景】完全大血管転位症(TGA)1型は、卵円孔狭小のため生後早期にバルーン心房中隔裂開術(BAS)や手術を必要とすることがあり、胎児診断が重要となる。出生後にTGA1型と診断され、BASや手術に至る前に死亡した一例を報告する。【症例】母は都内産科Aで管理され、異常の指摘はなかった。A病院にて分娩停止のため緊急帝王切開術で出生した。直後に啼泣したが、中心性チアノーゼが改善せず生後3分より酸素投与を開始され、5分時でSpO2 65%であり、マスクCPAPを開始された。体重は3080g、Apgarスコアは8点(1分値)、8点(5分値)であった。以降もSpO2 70%と低値で努力呼吸があり、生後63分にB病院NICUに新生児搬送された。入室時、SpO2 73%(上下肢差なし)、心拍数 155 回/分であった。超音波検査でTGA1型と診断され、当院へ転院する方針となり、プロスタグランジンE1製剤の静注を開始された。その後SpO2 40%、心拍数 60 回/分未満となり、蘇生を開始し、生後2時間35分に気管内挿管された。さらにドパミン塩酸塩を開始し、SpO2 70%、心拍数 100 回/分まで回復したのち当院に搬送となった。生後3時間18分の当院到着時、心拍数 60 回/分の徐脈と瞳孔散大を認めた。超音波検査では卵円孔狭小が確認されたが、全身状態を考慮しBASの施行は断念し、生後4時間12分に死亡を確認した。【考察】当院で直近3年間に院内出生したTGA患者のうち出生直後に緊急BASが必要と判断されたのは2例で、出生から初回のBAS施行までそれぞれ2時間17分、3時間11分を要しており、本症例でも、出生後速やかにBASの準備を開始しなくては救命困難であったと考えられた。医療が充実した東京都内であっても、胎児診断されていない心疾患では救命が難しいことがあり、胎児心エコースクリーニングの体制確立が急務である。