[I-P25-05] 新生児搬送となった重症先天性心疾患症例の検討~SpO2スクリーニング導入へむけて~
Keywords:重症先天性心疾患, SpO2スクリーニング, 新生児搬送
【背景】胎児心臓超音波の普及で重症先天性心疾患(cCHD)の胎児診断は増加している一方、出生前診断に至らない症例も一定数存在する。出生後に酸素飽和度を測定するcCHDスクリーニングが、出生前診断できなかったcCHDの早期発見に有効と報告されている。これまで本邦において単施設での報告は散見されるが、一次産院と高次医療機関とが連携した研究の報告はない。【目的】県内統一SpO2スクリーニングを開始するに先立ち、過去10年間の県内NICU施設に搬送されたcCHD症例を把握し、問題点を抽出する。【方法】2008年4月~2018年3月までに佐賀大学及びNHO佐賀病院NICUへ新生児搬送となったcCHD症例を診療録を用いて、SpO2測定の有無、搬送理由、初回手術介入までの生存率・人工呼吸の有無・合併症について検討した。その内、胎児診断例・染色体異常例は除外した。【結果】症例数は25例、在胎週数39.2±1.4週、出生体重2845g±304g、搬送日齢4.8±8.8日、退院日齢14.5±13.3日であった。疾患の内訳は、TGA4例、CoA5例、IAA2例、HLHS2例、PA8例、Truncus1例、TAPVD2例。搬送理由は、SpO2低下9例、SpO2上下肢差2例、心雑音5例、チアノーゼ4例、呼吸障害3例。動脈管依存型心疾患は25例中19例(76%)であり、このうちIAAの1例はductalshockの為搬送された。人工呼吸器症例は3例で、心雑音・チアノーゼを認識していてもSpO2を評価していない症例が5例あった。全身状態安定化の後に全例手術目的に転院となり、術後急性期に死亡したCoA1例以外は全例生存している。【考察】本検討の約3/4は動脈管依存性であり、これらは出生後SpO2スクリーニングでductalshockになる前の診断が望ましい。当県内では出生後SpO2スクリーニングが統一されておらず、産院を退院した後に紹介される症例もあった。県内産科施設にスクリーニングを浸透させ、その陽性者を速やかに高次医療機関への受け入れを行う事で安定した術前管理を展開できる。