第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスターセッション

外科治療

ポスターセッション26(I-P26)
外科治療 1

Thu. Jun 27, 2019 5:40 PM - 6:40 PM ポスター会場 (大ホールB)

座長:小沼 武司(三重大学附属病院 心臓血管外科)

[I-P26-02] 動脈修復再生パッチの開発:移植後の組織評価

中山 泰秀1, 佐藤 康史1,2, 岩井 良輔1,2, 古越 真耶3 (1.バイオチューブ株式会社, 2.岡山理科大学 技術科学研究所, 3.北海道大学 総合化学院)

Keywords:組織工学, 大動脈, パッチ

【目的】我々が提唱する生体内組織形成術(iBTA)を用いると、鋳型を皮下に埋込むだけで自己結合組織からなる自家移植用組織膜(バイオシート)を作製することができる。小児への植え込みデバイスに要求される最大の性能は成長を妨げないことであると考える。iBTAで得られる組織は再生、成長能を有することを同種管状組織体(バイオチューブ)で実証した。同種バイオシートを初めて大動脈の修復材として応用し、急性期の耐圧性を有することを昨年報告した。本研究では移植半年までの経過観察を行い、組織学的な再生能を調べた。
【方法と結果】シリコーン心棒とステンレス鋼パイプから鋳型を組み立てた。これをビーグル犬の皮下に2カ月間埋め込んで摘出した。鋳型の部材を全て取り外して得た結合組織管を切り開くことで、厚さ約1mm、大きさ7cm x 5cmのバイオシートを得、アルコール中で保存した。ビーグル犬を左開胸し、下行大動脈を露出させ、部分クランプした。欠損口(約10mm x 5mm)を作製し、同形状に切り出したバイオシートを6-0 ナイロン糸を用いて連続縫合によって移植した。コントロールとしてグルタール処理された市販のウシ心嚢膜シートを用いた。バイオシートはカッティングすることなくしっかり縫着でき、吻合部出血は容易に止血可能で、バイオシートと動脈との密着性は良好であった。術後抗血小板薬を1ヶ月投与した。観察期間中全例で瘤化や破裂はなかった。移植3ヶ月後、両種シートとも炎症や分解はほとんど認めず、新生組織が両シートの内腔面に積層した。移植6ヶ月後、心嚢膜シートでは顕著な変化は無かったが、バイオシートでは内部にαSMA陽性細胞の浸潤が起こり新生組織の境界が不鮮明であった。バイオシートの分解と動脈壁への再構築過程にあると考えられた。
【結語】急性期に大動脈圧に耐えたバイオシートは、内膜層の形成ならびに中膜組織への置換をもたらす大動脈再生の優れた足場材料と言える。