[I-P27-01] 小児期にFontan非適応と判断されるも、褐色細胞腫摘出術後に再評価し成人期に両側両方向性Glenn + TAPVC修復術を施行した一例
Keywords:Glenn, TAPVC, 褐色細胞腫
症例は26歳女性。通常出生後、2ヶ月時にチアノーゼを指摘され近医受診。1歳時に脳梗塞を発症し、以降左半身不全麻痺が残存。3歳時に心臓カテーテル検査を施行し、{S,D,L} asplenia, cAVSD(Rastelli C), TAPVC(Ib+III), DOLV, small LV, PS, bilateral SVC, RAAと診断されるも、当時PHにてFontan indicationなしと診断されていた(詳細不明)。19歳時に腹痛を契機に後腹膜腫瘍を指摘されて前医大学病院を受診。褐色細胞腫、深部静脈血栓症、多発血栓塞栓症(腎動脈、脳梗塞、右腸骨動脈閉塞)と診断され、下肢血行再建手術を施行するも血栓閉塞を繰り返すため、薬物治療を施行された状態で24歳時に当院紹介。SpO2 60%台の高度チアノーゼを認めたが、褐色細胞腫を摘出後に血行動態を評価することとした。25歳時に前医泌尿器科にて腫瘍摘出術を施行。小児科、集中治療科等も関わる慎重な周術期管理にて耐術し、術後当院で心臓カテーテル検査を施行したところ、Glenn手術の適応ありと診断。26歳時に当院にて両側両方向性Glenn手術+TAPVC repair(posterior approach)+前方AV結節cryoablation術を施行した。術後経過は非常に安定しており、SpO2は60%台から80%程度まで改善し、著明なADLの改善を認めた。【結語】複雑な病態が絡んでいる場合には、以前に手術適応なしと診断された症例の中にも、詳細な精査によって、または他疾患を治療することによって、手術適応ありと判断できる症例が存在する可能性がある。各々の症例ごとにチームで総合的に検討することが肝要である。また、治療にあたっては、成人先天性心疾患チームのみでは解決しきれない多くの科の関わりを要するものもあり、時には他院との連携を要することもある。治療の成功のためには、全ての医療者間での綿密な情報共有が不可欠である。