[I-P29-05] 左冠動脈肺動脈起始症における僧帽弁閉鎖不全への外科的治療介入およびその遠隔期成績
Keywords:ALCAPA, Mitral valve regurgitation, mitral valve function
【背景】左冠動脈肺動脈起始症は比較的稀な先天性心疾患であるが、左室機能低下や機能的僧帽弁逆流が問題となることがある。当院では僧帽弁逆流(MR)がmoderate以上ある場合に積極的に治療介入している。当院での遠隔期成績、遠隔期僧帽弁機能について検討した。【対象】1988年から2018年に当院で行われた左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)の手術について、僧帽弁に対する治療介入、術前後の左室機能、僧帽弁機能、遠隔期成績について診療録をもとに後方視的に検討した。【結果】ALCAPAに対する手術は21例、手術時年齢:1歳4ヶ月(1ヶ月-10歳)、体重8.9kg(3-33.6kg)であった。術前EFは70%(19-82.5%)で50%以下の症例は4例。僧帽弁に対して治療介入したのは10例(50%)で、術前の逆流の程度はmild:1例, moderate:5例, severe:4例であった。僧帽弁に対して治療介入しなかった11例のMRは全例none-trivialであった。 僧帽弁に対する治療内容は弁輪縫縮+人工腱索が6例、弁輪縫縮のみが3例、逆流制御困難のため弁置換となった症例が1例であった。人工心肺時間151分(108-581分)、遮断時間98分(51-332分)、ICU滞在日数1日(1-24日)であった。退院時のMRはnone-trivialが16例、mildを5例に認めた。手術死亡はなく、観察期間中、遠隔死亡は認めなかった(観察期間中央値12年(2ヶ月-18年))。遠隔期僧帽弁に対する再手術はなく、最終フォロー時の心臓超音波検査でEF:71.8%(59-81.9%)、MR:none-trivial:16例(78%),mild:4例(18%)、moderate:1例(4%)、僧帽弁流入速度:1.12m/s(0.6-2.1m/s)であった。【まとめ】当院でのALCAPAに対する手術の遠隔期成績は良好であった。moderate以上のMR残存、再発は1例のみであり、再手術例はなく心機能および僧帽弁機能ともに保たれていた。今回の検討ではmild以上の僧帽弁逆流に対して治療介入していたが、遠隔期僧帽弁機能は良好で、治療戦略は妥当であると考えられた。