第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスターセッション

周産期・心疾患合併妊婦

ポスターセッション30(I-P30)
周産期・心疾患合併妊婦

Thu. Jun 27, 2019 5:40 PM - 6:40 PM ポスター会場 (大ホールB)

座長:星合 美奈子(山梨県立中央病院 小児循環器病センター)

[I-P30-01] ジアゾキシド投与中に治療抵抗性の低血圧をきたし脳室周囲白質軟化症を生じた極低出生体重児

岡田 清吾, 福永 真之助, 太田 晴香, 古田 貴士, 平野 玲史, 石川 雄一 (山口県済生会下関総合病院 小児科)

Keywords:先天性高インスリン血症, 循環不全, バソプレシン

【背景】ジアゾキシドはKATPチャネル開口作用を有する.近年は膵β細胞への作用を期待し,主に高インスリン血症治療薬として低用量で使用されている.しかしながら,過去にはその末梢血管拡張作用に基づき,高血圧緊急症に対し降圧薬として使用されていた.我々は先天性高インスリン血症の極低出生体重児に対してジアゾキシドを使用し,治療抵抗性の循環不全を経験した.【症例】双胎第2子の女児.在胎34週0日に出生体重1,108gで出生した.出生後から低血糖が遷延し,血糖維持に糖注入率10mg/kg/分を要した.日齢1の血液検査で低血糖時の比較的高インスリン血症をみとめ(血糖29mg/dL,インスリン7.3 μU/mL),先天性高インスリン血症と診断した.日齢3からジアゾキシドを4.5mg/kg/日で開始し,以後血糖値に応じて9mg/kg/日まで漸増した.日齢9から突然の血圧低下および乏尿をみとめた.心エコーでは心嚢液貯留あるいは左室壁運動の低下はみとめなかった.容量負荷,カテコラミン投与,およびステロイド投与を行ったが効果は限定的であった.ジアゾキシド中止後も症状が遷延したため,日齢10にバソプレシン0.001単位/kg/分の投与を開始したところ,速やかに血圧および尿量が改善した.日齢13に脳室周囲のエコー輝度上昇をみとめた.日齢63の頭部MRI検査で両側側脳室の拡大および脳室周囲の嚢胞性病変をみとめ,脳室周囲白質軟化症と診断した.【考察】「先天性高インスリン血症診療ガイドライン」ではジアゾキシドの循環器系副作用として水分貯留およびそれによる頻脈,心不全,あるいは動脈管再開通が記載されている.高インスリン血症に対するジアゾキシド投与量は比較的低用量であるが,治療抵抗性の血圧低下に十分留意する必要があると考えた.またジアゾキシド投与中に生じた治療抵抗性低血圧にはバソプレシンが有用である可能性が示唆された.