[I-P30-03] 生直後に心内巨大血栓が認められ短時間のうちに自然消失した重症胎児仮死の一例
Keywords:血栓, 新生児, 消失
【背景】胎児期の血栓症の報告はあるが、生直後に認められた血栓の短時間での自然消失の報告はみられない。【症例】日齢0、男児。在胎22週6日に、前置胎盤のため、母親が当院産科を紹介受診した。在胎30週6日に胎動減少のため再診したところ、子宮収縮が頻回で、同日、胎児心拍数が30/分となり、緊急帝王切開で児を娩出した。出生体重1589g、Apgar score1分0点・5分1点。直ちに胸骨圧迫、気管挿管、アドレナリン投与により蘇生され、当院NICUに入院となった。臍帯血pHは 6.979であった。NICU入院直後の心エコーにて、三尖弁に付着し、収縮期に右房内に、拡張期に右室内へ移動する巨大腫瘤(直径9mm)を認めた。三尖弁血流に通過障害は認めず、他の箇所には腫瘤を認めず、心血管の構造異常も認めなかった。アシドーシス補正・カテコラミン投与・呼吸管理を行ない、前回から約1時間後に心エコーを施行したところ、右心および肺動脈内に見られた巨大腫瘤は消失していたため、血栓と診断した。肺塞栓を示唆する所見を認めなかった。出生時の血液検査では、pH 6.936, APTT 106.8秒、PT-INR 5.20、FIB 67mg/dL、FDP 1071μg/ml以上、Dダイマー 600μg/ml以上、AT3活性21%と重度凝固異常を認め、血栓症と矛盾しなかった。しかし、その後の経過で血液凝固異常は改善し、血栓症の再燃は認めなかった。胎盤病理診断では明らかな血栓形成は認めなかった。【考察】胎児期に心内血栓の指摘はなく、蘇生に時間を要した出生前後の循環不全により右房内血栓が形成され、循環回復により血栓が短時間に消失しえたと考えられた。こうした症例で発見時に抗血栓療法を開始すべきかを明らかにするためには、症例の蓄積が必要である。