[I-P31-02] 当施設における小児期発症特発性肺動脈性肺高血圧の診療の現状
キーワード:肺動脈性肺高血圧, 肺血管治療薬, エポプロステノール
【背景】1999年のPGI2の認可以来 新しい肺血管治療薬が次々に登場したこと、移植医療体制の確立もあり 特発性肺動脈肺高血圧(IPAH)の治療は劇的に変遷した。近年本邦で成人領域では平均肺動脈圧(mPAp)を低下させるような積極的な肺血管治療薬の使用が広く行われているが、小児期のIPAHに関して明確な指針はない。【目的】2000年以後当科で加療した 小児期発症 IPAH/HPAHについて臨床経過、治療予後について検討し、小児期発症IPAH診療の現状と問題点を検討すること。【結果】小児期発症IPAHは8例(男児4例 女児4例)。発症年齢(1.3歳~13.7歳(10.8歳) 診断時のWHO FCはI~IV 初回カテーテル検査時の平均肺動脈圧は 47-86mmHg(66mmHg)。平均経過観察期間は9.1年(0.5-20.8年)。PH治療薬は、1例を除いて 全例3系統の薬剤の内服治療が行われていた。Epoprostenol(Epo)持続静注は5例に施行されていた。Epoの導入を必要としなかった3例は、発症時のFCがI~IIと比較的良好であり、経過中 全例FC I、mPAp≦30mmHg BNPも正常範囲内で良好にコントロールされていた。一方Epoを導入された5例は1例死亡 1例肺移植 2例で肺移植待機中であった。Epo導入してもmPAp≦40mmHGを維持できた例はなく、徐々に肺動脈圧は上昇した。またEpo増量でCIが高くなる傾向にあった。【結語】発症時の状態 血行動態の良好な群は比較的良好にコントロールされていた。重症例はEpoに反応するものの その反応性は症例ごとに異なり、その経過もさまざまであった。またEpoを含む3系統薬剤を使用しても、重症例では低い平均肺動脈圧は達成できなかった。小児期発症の重症IPAHは、成人のIPAHと比較しても進行がはやく、治療反応性が悪く、肺動脈圧が低下しにくい特徴があることが示唆された。重症例での治療の目標をどう設定していくべきか、evidenceの蓄積が必要と考えられた。