第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

Presentation information

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧

ポスターセッション31(I-P31)
肺循環・肺高血圧 1

Thu. Jun 27, 2019 5:40 PM - 6:40 PM ポスター会場 (大ホールB)

座長:西山 光則(恵愛病院 小児科)

[I-P31-04] 肺高血圧治療薬3剤併用でも救命しえなかった1例

関 俊二1, 西畠 信1, 徳永 正朝1,2 (1.鹿児島生協病院 小児科, 2.公立種子島病院 小児科)

Keywords:精神発達遅滞, 肺高血圧治療薬, 死亡

【背景】小児の肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療戦略は未確立で、成人における治療戦略に準じた薬剤選択がなされているのが現状である。また精神遅滞がある場合、肺移植を最終手段とすることが難しいなど、治療の選択肢に難渋することが多い。【症例】血管輪の手術歴のある16歳男性。多発奇形と精神遅滞に対し経過観察していた。11歳の時に浮腫と嘔吐を主訴に来院され、心臓血管カテーテルなどの各種検査の結果、特発性肺高血圧症(ニース分類第1群1-1 特発性PAH)と診断した。エポプロステノール持続静注は自己抜去のリスクなどから管理困難と判断し、タダラフィル、ボセンタンの2剤併用を開始した。その後も消長を繰り返し、ボセンタンからマシテンタンへの変更と、さらにセレキシパグを追加し、3剤併用で経過は安定していた。16歳時に徐々に倦怠感を訴えるようになり、BNPが漸増した。吹き流しでの酸素投与を開始したが、翌月にはPH crisisを発症、その時点では救命し得たが、その後も肺高血圧のコントロールは不良で、内服増量などを試みたが、数日後心肺停止で救急搬送され死亡した。脳死肺移植については適応外と判断された。【考察】特発性PAH治療にはコントロール不良症例のみならず、初期から機序の異なる多剤併用が推奨されている。本症例は精神遅滞を基礎疾患に持ち、エポプロステノールを使用せず内服治療薬3剤を選択したが、救命し得なかった。精神遅滞のある症例では治療選択や介入の度合いなど、ご家族の意向を含めた慎重な選択が必要となる。【結論】肺高血圧治療薬3剤併用では救命し得なかった症例を経験した。精神遅滞がある症例では本症例のような事実を踏まえ、治療方針を慎重に決定する必要がある。