第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧

ポスターセッション32(I-P32)
肺循環・肺高血圧 2

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:宗内 淳(九州病院 小児科)

[I-P32-02] 心房中隔欠損合併肺高血圧症に対する治療介入の妥当性

中山 智孝, 川合 玲子, 矢内 俊, 高月 晋一, 松裏 裕行 (東邦大学医療センター大森病院 小児科)

キーワード:肺高血圧, 心房中隔欠損, 治療方針

【背景】本来、三尖弁前短絡である心房中隔欠損(ASD)に肺高血圧(PH)を来たすことは稀だが、遭遇すると治療方針決定に悩まされる。【目的】ASD合併PH症例の適切な治療方針を検討する。【対象・方法】当院を受診したASD(卵円孔開存は除く)合併PH 15例を後方視的に患者背景、血行動態、臨床転帰を調査した。【結果】PH診断年齢は中央値16.9(1.5~76.1)歳、性別(F:M)13:2、ASD径16.4(9.6~36)mm、部位は二次孔型(14)・静脈洞型+PAPVR(1)、多脾症候群(1)・特発性赤血球増加症(1)合併あり。家族歴はASD(1)、PH(2)。診断契機は労作時息切れ(7)・心拡大(3)・チアノーゼ(2)・学校検診(2)・その他(2)。ASD診断時期はPHの診断前(3)・同時(10)・診断後(2)に分かれた。当院でのカテ時年齢は21.9(11.3~76.4) 歳、うち7例でPH特異的治療中。安静時SatO2は93.4(80~98)%、肺動脈平均圧MPAP 56(30~95) mmHg、肺血管抵抗Rp 15.5 (4.3~55)単位・m 2、肺体血流比Qp/Qs 0.93(0.5~2.7)、肺体血管抵抗比Rp/Rs 0.68(0.1~1.81)、この時点で閉鎖術の適応条件(Qp/Qs>1.5, Rp<6単位・m 2, Rp/Rs<0.3)を全て満たしたのは1例(60/M、径36mm)のみ。酸素負荷試験が施行された14例ではRp 20.3±15.1→16.6±14.4単位・m 2(p<0.05)へ低下、うち2例(48/F、76/F)が閉鎖術適応を満たし経皮的閉鎖術を施行。残り13例はPH特異的治療を新規導入または強化。観察期間7(0~15)年で生存9・肺移植(+ASD閉鎖)2・死亡4。再カテした6例ではQp/Qs 1.0±0.3→1.2±0.5、Rp 20.5±12.1→20.0±9.5、Rp/Rs 0.84±0.47→0.95±0.70(ns)と変化はないが、SaO2 94.1+/-3.6→94.5+/-2.5(ns)は保たれた。【結論】ASD合併PHは小から大欠損、幼児から高齢者、特発性PAH類似からEisenmenger 症候群まで臨床像は多彩。高肺血管抵抗ASDに対するPH特異的治療薬は病状悪化抑制には有効、閉鎖術適応境界例には個別の対応を要する。