第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧

ポスターセッション34(I-P34)
肺循環・肺高血圧 4

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)

[I-P34-01] 右心バイパス症例に対する肺血管拡張薬投与の現状

原田 雅子, 倉岡 彩子, 兒玉 祥彦, 石川 友一, 中村 真, 佐川 浩一, 石川 司朗 (福岡市立こども病院 循環器科)

キーワード:肺血管拡張薬, Fontan手術, 右心バイパス

【【背景】近年右心バイパス症例に対し肺血管拡張薬(PVD)を投与する症例が増加しているが、その適応についての明確なコンセンサスはない。当院のPVD投与の現状を報告する。【方法】2016年11月から2018年10月にFontan術(F術)後半年のカテーテル検査を行った69例(4.3±3.2歳)のうち、PVD導入19例(投与群)と非導入50例(非投与群)を後方視的に比較検討した。【結果】投与群にはHLHSが多く(投与群/非投与群 47/24%)、5例が気道合併症を有した。初回姑息手術として両側肺動脈絞扼術が多く(42/8%)、体肺動脈短絡術が少なかった(26/58%)。 PVDの種類は13例(68%)がPDE5阻害薬単独, 1例(5%)がET受容体阻害薬単独, 5例(26%)は2剤併用であり、導入時期はGlenn術(G術)前1例、G術後9例、 F術後9例であった。投与群ではG術前肺動脈圧が有意に高く(13.5/12.0 mmHg; p<0.05)、PA indexは小さい傾向を示した(194/256mm2/m2, p=0.07)。一方、F術後半年の時点では肺動脈圧には群間差なく(8.3/8.3mmHg)、PAIはG術前同様の傾向を示した(207/237mm2/m2, p=0.10)。肺血管抵抗(RpI) (1.24/1.74 U/m2, p=0.005)およびTranspulmonary pressure gradient(3.6/5.0 mmHg, p=0.004)は投与群で低く、肺動脈楔入圧(4.7/3.3mmHg, p=0.004)と心係数(CI)(3.5/3.0L/min/m2)は高かった。また投与群ではCMRでの体肺側副血流量(F術後半年)が多く(N=9/20;1.02/0.66 L/min/m2,p=0.02)、F術周術期NO吸入期間が長かった(7.3/5.7日, p=0.028)。【考察】PVDは肺血管床が乏しいハイリスク症例に導入されており、投与によりFontan術後の肺動脈圧は非ハイリスク群と同等となったと推測される。【結論】PVDは右心バイパス症例に好ましい影響を及ぼしている可能性がある。今後はPVD導入の客観的な基準を設け、導入前後の臨床所見・血行動態指標を詳細に解析することでより明確なPVDの適応・効果示すことができるだろう。