第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧

ポスターセッション34(I-P34)
肺循環・肺高血圧 4

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)

[I-P34-05] 乳児早期に発症する片肺高血圧症の原因と治療

齋木 宏文, 桑田 聖子, 高梨 学, 菅本 健司, 先崎 秀明 (北里大学 小児科)

キーワード:肺高血圧, 片肺, 心不全

背景:肺高血圧症は先天性心疾患に伴う重要な合併症であるが多くの場合、高肺血流に合併し、血流量の適正化により改善することが多い。一方、孤立性一側肺動脈欠損をはじめとする片側肺動脈が正常な疾患群において、病側肺動脈に適切な加療を行わなければ健側肺に高率に肺高血圧症を合併することが知られている。対象と方法:正常もしくは低肺血流でありながら肺高血圧症を乳児早期に発症した症例(安静時平均肺動脈圧25mmHg以上)の特徴と治療方針を総括し、乳児期後期以降に肺高血圧を発症した症例と比較検討する。結果:当院で乳児早期に非高肺血流性肺高血圧症を発症した症例は4例であった。疾患の内訳は孤立性一側肺動脈閉鎖、肺動脈スリング修復後、Scimitar 症候群修復後、総肺静脈還流異常修復後片肺静脈閉塞で、いずれも健側肺循環に異常のない二心室循環であった。肺高血圧は出生時から低下することなく生後1-4か月で病側肺動脈に対する介入を検討するまで継続し、(カてーてる検査による肺動脈血流波形はコンプライアンス低下を示唆した。)病側肺循環に対して介入を行うことに加え肺血管拡張薬を調整し肺高血圧に改善傾向が得られたが、この際、病側肺動脈の病態に留意しながら慎重に投薬を行うことが必要であった。一方、乳児中期以降に非高肺血流性肺高血圧を診断した8例では末梢肺動脈血管抵抗が低下した時期があり、肺血管のみでなく肺実質の病変が疑われる症例が多かった。結論:乳児早期に非高肺血流性肺高血圧症を呈する症例は健側肺が生理的肺高血圧を離脱する前に強制的に高肺血流となる循環の特徴があった。このことは動脈管依存性体循環において大きく動脈管を開けておくことが生理的肺高血圧遷延に寄与するメカニズムと類似していると考えられ、この病態の改善には病側肺循環の改善による健側肺血流量の低減が有効であった。