第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

心臓血管機能

ポスターセッション36(I-P36)
心臓血管機能 1

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:増谷 聡(埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器部門)

[I-P36-02] PA VSD MAPCAにおけるPA capacitanceの妥当性と有用性。

豊村 大亮, 石川 友一, 岩崎 秀紀, 鈴木 彩代, 鍋島 泰典, 寺師 英子, 倉岡 彩子, 兒玉 祥彦, 中村 真, 佐川 浩一, 石川 司朗 (福岡市立こども病院 循環器科)

キーワード:PA Capacitance, PA VSD MAPCA, 心臓MRI

【背景と目的】従来、肺血管床の指標として、PA index(PAI)が用いられてきたが、複雑な肺血管形態では、血流の均一性が失われ適用が難しくなる。一方、PA Capacitance(PAC=ΔV/ΔP)は精細な肺血管床の指標と広く認識され、心臓MRI(CMR)で計測した肺血流量(ΔV)と心カテで求めた脈圧(ΔP)から算出でき、PAH領域では有用性も報告されている。今回PACをPA/VSD/MAPCAに適用しその妥当性・有用性を検証した。
【対象と方法】対象は2011年から2018年にCMRと心カテを同時期施行したPA/VSD心内修復術後 33例(年齢 12.4±4.1歳, 男/女 17/16人うちMAPCA合併12例)。肺血流量、肺動脈圧および肺動脈楔入圧から左右別個に求めたRpI、PACを合算したtotal RpI, total PACと他の血行動態指標との相関および肺血管統合術(UF)の有無による違いを検討した。
【結果】total PAC(2.9±0.9ml/mmHg/BSA)はtotal RpIと指数近似で負相関(R=-0.64, p<0.05)し、RVEFとは線形近似で正相関(R=0. 43, p<0.05)した。UF必要例ではUF不要例と比較してPACは有意に低値であった(2.5±0.7/3.1±0.9, p=0.03)。一方、PAIはPACと正相関したが(R=0.38, p=0.01)、RVEFと相関はなく、PR fraction、RVEDV、RVCIと正相関(R=0.42, 0.52, 0.57)した。
【考察】PACとRpIの関係は既報同様で、UF必要例で低値であることから臨床的に妥当と考えられた。total PACが低い(=肺血管床が乏しい)ほどRVEFが低くなることから、肺血管床(=後負荷)に右室が適応できるか否かがVSD閉鎖の鍵となるPA/VSD/MAPCAにおいて、VSD閉鎖の可否を予測する重要な因子といえる。RVEF=40%を右室適応限界と仮定するとtotal PAC≦1.35ml/mmHg/BSA以下でVSD閉鎖困難と解釈される。他方PAIはtotal PACと同様に肺血管床を反映するが、PRの影響が強く右室機能とは相関しなかった。
【結論】total PACはPA/VSD/MAPCAにおいても妥当な肺血管床指標であり治療方針決定に有用と考えられる。