[I-P37-02] 単一心拍から収縮末期圧容積関係を求める斬新な方法
Keywords:ESPVR, single heart beat, hemodynamics
【背景】一過性前負荷変化時の心室圧最大変化率(dp/dt max)‐拡張末期容積関係(EDV)の傾きは、時変エラスタンスモデル(TVEM)に基づいて算出される負荷非依存の心収縮性を表す指標の一つである。我々は、同様に心室圧最小変化率 (dp/dt min)‐収縮末期容積関係 (ESV)関係も負荷非依存の収縮性指標となることを見出した。二つの関係を利用し収縮末期圧容積関係(Emax)が定常状態の単一心拍のみから算出可能であるという仮説を検証した。【方法と結果】心室エラスタンスの収縮に伴う時間変化をE(t)とすると心室圧P(t)と心室容積V(t)の関係はP(t)=E(t)×(V(t)-Vo) (式1)と表すことができる。P(t)変化率は式1を微分してdp/dt=dt[E(t)×(V(t)-Vo)]dtとなる(式2)。 E(t) をその最大値EmaxとEmaxに至る時間Tmaxで正規化した関数をEN(tN)とするとE(t)= (Emax/tmax)×EN(tN)と表され、dp/dt max、dp/dt minはそれぞれV(t)がEDV、ESV近辺で起こることを利用すると式2からdp/dt max= Emax/tmax×(d EN(tN)/dt max) ×(EDV-Vo)、dp/dt min=Emax/tmax×(d EN(tN)/dt min) ×(ESV-Vo)と表現できる。EN(tN)の形状は個体間でほぼ一定とされるので、d EN(tN)/dt maxとd EN(tN)/dt minの比をKとしてVoを求めることが可能である。成犬25例で48時間ペーシング後、アンギオテンシン持続皮下注後など条件変化下でもKの変化に有意差はなかった。さらに、Kは0.72+/-0.18の比較的狭い範囲に収束したが、Kの平均値を用いVoからEmaxを逆算すると実測Emaxとの間には解離を示す症例が存在した。そこでKに影響を及ぼす因子を多変量解析で検討し、Kを各個体で補正したK’を用いてVo、Emaxを再度算出した。補正式から求めたEmaxは実測Emaxと良い相関を示した(y = 0.76x + 5.2 R= 0.7)。【考察】TVEMの正規化エラスタンス曲線は弛緩期のばらつきが比較的多いが、影響を与える要素を考慮することで単一心拍からEmaxを推定することが可能である。