[I-S02-02] His束近傍副伝導路に対する新しい治療戦略
キーワード:WPW症候群, 副伝導路, カテーテルアブレーション
【背景】His束近傍副伝導路(AP)(pHis)に対する高周波(RF)カテーテルアブレーション(CA)は房室伝導障害の危険性と再発率が高い。近年、冷凍凝固(Cryo)と新しい3Dマッピングシステム(3DM)RHYTHMIA(RHT)が順次使用可能となり当院の治療戦略は変化したので、その使用経験を報告する。【目的】pHisに対する安全なCA方法を検討すること。【方法】当院でCAを行なったpHisについて診療録を元に後方視的に検討した。pHisの定義は前中隔、中中隔APで、通電部位にHis束波を認めたものとした。【結果】症例は7例(男:女=4:3)、年齢15.5±2.6歳(平均±標準偏差)、身長158±7.7cm、体重55.2±11.6kg、観察期間 18±8.8ヶ月、顕性4/7例、6/7例で術前に発作性上室頻拍を認めた。使用した3DMはEnsite NavX(NavX)が3例、RHT導入以降は4例全例に使用した。APの位置は中中隔5例、前中隔2例であった。6例にCryo (6mm tip)を使用し、1例でRFを使用した。5例で通電部位にAP電位を認めた。成功通電部位とHis束カテーテルとの距離は透視画像(右斜位45°) で4.0±1.4mm、3DMで 5.5±2.7mmであった。7例中6例で治療成功し、合併症と再発例はない。RHT+Cryoでは全例成功した。NavX群とRHT群では、透視時間23±8分, 33±3分、Cryo-mapping部位13.3±11.8カ所, 6.7±5.4カ所、Cryo-ablation部位 3.0±2.2カ所, 1.7±0.9カ所であった。1例は右房側からNavX+Cryoで不成功、2回目はRHT+RFで大動脈無冠尖(NCC)から通電し成功した。【結論】NavX群に対してRHT群はCryo-mapping/ablation回数は共に少ない傾向にあった。またRHTでは冷凍開始時のアーチファクトが生じず、カテーテルが固着し、房室結節への影響が可逆的なCryoの利点と、精細な位置情報がわかるRHTを組み合わせることで、現状ではCryoとRHTの組み合わせが最も安全で成功率の高い治療戦略である。右房からの不成功例はNCCからのアプローチが有効である。