第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム3(I-S03)
胎児徐脈性不整脈の胎児治療とハイリスク症例への対応

Thu. Jun 27, 2019 10:20 AM - 11:50 AM 第2会場 (大ホールA)

座長:堀米 仁志(筑波大学医学医療系 小児科)
座長:漢 伸彦(福岡市立こども病院 胎児循環器科)

[I-S03-04] 母体抗52kD SS-A/Ro、抗60kD SS-A/Ro抗体測定による胎児心ブロック予防方法の検討

石井 陽一郎1, 森 雅啓1, 廣瀬 将樹1, 松尾 久実代1, 平野 恭悠1, 青木 寿明1, 高橋 邦彦1, 盤井 成光3, 和栗 雅子2, 和田 芳直2, 萱谷 太1 (1.大阪母子医療センター 小児循環器科, 2.大阪母子医療センター 母性内科, 3.大阪母子医療センター 心臓血管外科)

Keywords:完全房室ブロック, 抗SS-A/Ro抗体, ステロイド予防投与

はじめに:抗SS-A/Ro抗体(SS-A)はシェーグレン症候群(SjS)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患で検出される。胎児先天性房室ブロック(CHB)は、SS-A陽性妊婦の1-2%に生じると報告され、胎児死亡または新生児ペースメーカー植込みの原因となる。SS-Aは52kDと60kDの異なる分子からなる抗体群で、52kD抗原に対する抗体がCHBに関連するとされている。そのため当センターでは抗52kD抗体が高値である妊婦に対し、プレドニゾロンの予防投与を施行している。
目的:当センターでの抗52kD抗体高値の母体について、CHB発生の有無とプレドニゾロン予防投与の効果を明らかにする。
対象・方法:2015年1月から2018年10月までにSS-A分画を計測した院内、院外症例のうち、胎児・新生児経過を確認することができた85例を対象に、診療録を後方視的に検討した。
結果:母体妊娠時年齢34.0±4.8歳で、出産歴を42例(49%)が有していた。膠原病診断としてSjS 38例、SLE 20例、関節リウマチ11例、既往無し12例であり、母体治療としてステロイド内服を行っていた症例は31例でその内服量は1-30mg/dayであった。母体抗52kD SS-Aは86.0±74.6で、抗60kD SS-Aは62.7±70.1であった。胎児・新生児経過として、死産児2例、新生児死亡1例で、出生児在胎週数37.6±2.5週、体重2561±568gであった。CHBは9例に発症し、全例ステロイド内服はしておらず、母体抗52kD抗体が100 index以上の症例は8例(88.9%)であった。母体抗52kD抗体が100 index未満の症例では、CHB発生とステロイド内服の有無に有意差は認めなかった(2.8% vs 0%; P=1.0)が、母体抗52kD抗体が100 index以上の症例では、ステロイド内服無しの症例は有意にCHB発生が多かった(33% vs 0%; P<0.05)。
結語:CHB予防のため、抗52kD抗体による層別化による母体プレドニゾロン予防投与は有用であると考えられる。現在Biorad社によるSS-A分画が測定可能となっており、今後の臨床への応用が期待される。