第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

Presentation information

シンポジウム

シンポジウム4(I-S04)
心不全病態に対する多面的アプローチ 基礎から治療へ

Thu. Jun 27, 2019 4:00 PM - 5:30 PM 第2会場 (大ホールA)

座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
座長:横山 詩子(東京医科大学 細胞生理学分野)

[I-S04-02] 心筋症患者から検出されたTBX5ミスセンス変異の病的意義の検討

宮尾 成明, 寶田 真也, 岡部 真子, 伊吹 圭二郎, 小澤 綾佳, 廣野 恵一, 市田 蕗子 (富山大学医学部 小児科)

Keywords:TBX5, 心筋症, Holt-Oram症候群

【背景】TBX5はHolt-Oram症候群という先天性心疾患と橈側列形成不全を特徴とする症候群における原因遺伝子として報告されて以降、心臓発生と心筋細胞の成熟化の中心的な役割を担う転写因子であることが知られている。T-boxドメイン(アミノ酸残基56~236)がこの機能に直接関与する一方、非T-boxドメイン(同255~264)にも異なる経路で心臓発生に関わる可能性が近年着目されている。【目的】当科の先行研究で次世代シーケンサーを用いた心筋症の網羅的遺伝子解析にて見いだされたTBX5のミスセンス変異(c.791G>A, p.Arg264Lys)(以下R264K)について心臓発生、心臓機能保持にどのような影響を与えうるか評価する。【方法】まず、R264Kが検出された患者を後方視的に収集しアレル頻度の比較と傷害性予測を行った。次に同変異のノックインマウスを用いて心臓超音波による生理学的評価、組織学的評価および遺伝子発現変動解析を行った。【結果】心筋緻密化障害192例、拡張型心筋症41例のうち同変異がそれぞれ4例、1例に検出された(計2.0%)。これは日本人のアレル頻度(0.75%)よりも多く、複数のコンピューター解析で障害性を有する可能性を示唆された。R264Kのホモ変異型マウスでは代償性心不全を呈し、左室内径短縮率の低下(34.2±1.7%対39.6±5.4%, p<0.05)、心拡大(p<0.05)、左室壁の相対的壁菲薄化(p<0.01)、心体重量比の増加(p<0.01)を認めた。病理学的検討では、心不全に関連して心内膜に沿った軽度の線維化を認め、RNA発現解析ではActa1の発現増加を認めた。【結語】 Tbx5 R264Kマウスはホモ接合体で代償性心不全を呈し、TBX5 R264Kは心筋症の成因の一因の可能性が示唆された。