[I-S04-04] 重症心不全に対する組織再生を応用した治療法の開発
キーワード:重症心不全, 再生医療, トランスレーショナルリサーチ
近年、自己心筋を再生し心機能を改善させ、より安全な心臓移植待機、願わくは心臓移植回避が可能となるようなアプローチが盛んに研究されている。当科ではこれまでに心筋再生を応用した心不全治療法開発を目指したトランスレーショナルリサーチを行い、その治療法を小児重症心不全へも適応拡大しており、その研究成果を報告する。まず、骨格筋芽細胞が損傷した骨格筋を補填することに注目し、自己筋芽細胞シートを用いた心不全モデルに対する移植実験を行い、各種サイトカインによる血管新生や幹細胞集積の誘導にて心機能が改善することを基礎研究で証明した。この成果から臨床研究を開始、企業治験を経てテルモ社のハートシートが製造販売承認され、2016年より保険診療が可能となった。小児重症心不全へは、2014年に12歳の拡張型心筋症患者に筋芽細胞シート移植を行い、現在ハートシートの小児への適応拡大を目的とした治験を3症例に行い経過観察中である。また、ヒトiPS細胞より作成した心筋細胞シートを作成、そのシートと心筋との電気的同期など筋芽細胞シートにはない特徴から、さらなる成果を目指し現在臨床への応用を準備している。さらに、創薬分野では、他疾患において臨床応用されている薬剤に注目し、プロスタグランジンIP受容体アゴニストであるono1301を徐放製剤化し、それをシートに浸潤させた製剤を心表面に貼付することで内因性組織修復因子の産生が促進され心機能が改善することを基礎実験で証明、現在医師主導型治験として臨床応用を行っている。また、High-morbidity group box 1 が骨髄間葉系幹細胞を障害組織へ遊走させる作用があることに注目し、その断片フラグメント全身投与によって心筋へ骨髄間葉系幹細胞が遊走、拡張型心筋症の心筋リモデリング抑制をもたらすことをハムスターモデルにて証明しており、今後、臨床応用へ向けた展開を検討中である。