第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム4(I-S04)
心不全病態に対する多面的アプローチ 基礎から治療へ

Thu. Jun 27, 2019 4:00 PM - 5:30 PM 第2会場 (大ホールA)

座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
座長:横山 詩子(東京医科大学 細胞生理学分野)

[I-S04-05] フォンタン循環を改善する工夫 -心房心室連関の重要性-

齋木 宏文, 桑田 聖子, 高梨 学, 菅本 健司, 増谷 聡, 先崎 秀明 (北里大学 小児科学講座)

Keywords:フォンタン循環, 房室伝導, 心不全

背景:高い中心静脈圧と前負荷予備能低下はフォンタン循環が抱える重大な問題であり、これらを解決する糸口として心血管系リモデリング予防や肺循環の改善が注目されてきた。心室拡張末期容積に代表される前負荷は心室拡張・弛緩能に影響を受けるが、心房機能もまた前負荷を規定する重要な因子である。フォンタン循環では洞機能不全を有する症例が少なくなく、房室連関不全内在が疑われるものの、疾患特性上前負荷が不足しやすいために超音波検査による従来の方法では房室連関不全を評価することはできない。対象と方法:フォンタン術後32症例を対象とし、基礎心拍数(BHR)+20bpmを目安に心房ペーシングを行い、基礎調律とPQ 間隔を変化させたペーシング調律(PHR)で血行動態指標の変化を解析した。結果:心房ペーシングによりBHR101±16bpmはPHR 120±17bpmとなり、収縮期末エラスタンス(Ees 23±15から 25±15mmHg/cm2, p=0.50)に変化はなかったが、後負荷増強 (実効動脈エラスタンス Ea 2.9±1.1から3.2±1.1mmHg/ml, p=0.0032)により一回拍出係数 (SVI 37±9mlから35±11ml, p=0.019)が低下し、心拍出係数 (CI)は増加した(3.4±0.7 から3.9±0.8L/min/m2, p=0.0004)。中心静脈圧(CVP)は12.3±3.1mmHgから12.8±2.9mmHg (p=0.051)と上昇傾向を認めた。房室伝導時間を示すPQ間隔 (104±46から121±32msec, p=0.20)の変化 (ΔPQ)は前負荷指標である拡張末期容積指数(EDVI)増加(ΔEDV=0.06*ΔPQ-4.70, p=0.041)およびSVI増加 (ΔSVI=0.03*ΔPQ-3.33, p=0.0024)と有意な正の相関を示し、心房収縮時間の延長が前負荷確保と強く関連した。HR上昇による影響をANCOVAにより統計学的に除外するとΔPQは極めて強くSVI増加に寄与した(標準化β 0.57, p=0.0052)。結論:心房ペーシングによる房室伝導時間の確保は慢性期フォンタン循環の重要な問題点である前負荷予備能維持に貢献し、SVI増加から心拍出量増加に強く寄与する。