第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム5(I-S05)
post tolvaptan eraのうっ血解除戦術〜利尿薬をどのように使うか

2019年6月27日(木) 10:20 〜 11:50 第3会場 (大ホールC)

座長:稲井 慶(東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)
座長:脇 研自(倉敷中央病院 小児科)

[I-S05-04] Post tolvaptan eraのうっ血解除戦術~小児におけるトラセミド、トルバプタンの効果~

高梨 学1, 齋木 宏文1, 桑田 聖子1, 福西 琢真2, 岩本 洋一3, 菅本 健司1, 石戸 博隆3, 増谷 聡3, 宮本 隆司2, 宮地 鑑2, 先崎 秀明1 (1.北里大学医学部 小児科, 2.北里大学医学部 心臓血管外科, 3.埼玉医科大学総合医療センター小児科 小児循環器部門)

キーワード:torasemide, tolvaptan, diuretics

【背景】近年、作用機序や作用時間の異なる種々の利尿剤が小児心不全におけるうっ血解除の選択肢として使用可能となっている。我々はループ利尿剤としてフロセミドに比して作用時間が長く抗アルドステロン作用も併せ持つトラセミドを小児心不全治療に積極的に導入するとともに、水利尿作用を発現するトルバプタンを術後早期よりループ利尿剤とともに使用し術後管理に役立てている。【方法】トラセミドとトルバプタンの小児使用経験を後方視的に検討し、その効果、安全性を検討した。【結果】トラセミドを使用した連続161症例のうち、フロセミド投与を3ヶ月以上受けていたが、フロセミド1mgをトラセミド0.2mg相当としてトラセミドに置換したもの30人では1例にて置換後、尿量減少と浮腫の出現を見たが、他の症例では尿量に有意差はなかった。血清K濃度はトラセミド変更後有意に増加し(p<0.05)、約60%の症例でK製剤を中止できた。また、血中renin活性、BNP濃度は有意に低下した。(p=0.03、p=0.04)。新規にトラセミドを開始した131人では、術式、術中経過のほぼ同じフロセミド投与の先天性心疾患35人と比較して、トラセミド投与により静注K投与期間が有意に短縮でき、内服K製剤必要量も有意に少なかった(p<0.05)。一方、心室中隔欠損症術後の連続76例においてトルバプタンを使用した群では非使用群と比べ、手術時月齢が早く(2.4±0.9ヶ月 vs 4.1±2.4ヶ月)、術後挿管期間(3.1±2.6日 vs 1.5±2.4日)、入院期間(20.1±17.0日 vs 13.8±17.0日)が長く、水分管理に比較的難渋した症例であったが、心嚢ドレーン留置期間(4.2±0.9日 vs 4.4±1.0日)やPICU滞在期間はほぼ同様(6.5±1.9日 vs 6.3±2.7日)であった。術後管理の向上に寄与する可能性が示唆された。【結語】小児の急性期、慢性期心不全管理において、各利尿剤の作用機序を考えた使用により、副作用が少なく効果的なうっ血解除が可能である。