[I-S06-02] 当院における乳幼児心臓移植後の経験
キーワード:心臓移植, 真移植遠隔期予後, 心臓移植後合併症
小児心臓移植は過去、特に乳幼児において海外渡航に依存せざるを得なかったが2010年改正移植法以降、徐々に国内移植が定着しつつある。当院において小児心臓移植後管理を行った60例中、乳幼児期(7歳未満)心臓移植30例(国内7例、海外渡航23例、移植後経過年数;0~17年)の経験を報告する。移植後、心不全が改善されるものの免疫抑制療法による免疫不全が様々な合併症の原因となり内科的管理と共に日常生活での規律も重要となってくる。移植後合併症は拒絶反応・感染症・悪性腫瘍・腎不全などが代表的で、その治療にも非常に難渋することが多い。急性拒絶反応は6例(細胞性:4例、液性:2例)に認められ治療を要したが、2011年以降の移植施行例では急性拒絶の経験はない。また慢性拒絶に代表される冠動脈硬化症は冠動脈造影と共にIVUS(体重20㎏以上)を施行し内膜肥厚の観察を行っているが1例に有意な冠動脈狭窄を認め薬剤溶出性バルーンによる介入を行った。日常管理において悩まされることが多い感染症は学校生活の中で頻繁に流行するパルボウィルスやノロウィルスの感染が慢性化する症例も散見される。死亡例3例すべてがEBV感染に伴う移植後リンパ増殖性疾患によるものであり定期的なウィルス定量検査を重ねつつその予防・早期発見に取り組んでいる。臓器移植な中でも免疫抑制剤の維持血中濃度が比較的高い心臓移植は多くの例に腎機能低下を認め生体腎移植も3例経験している。長期間かつ永続的に内服が必要な免疫抑制剤の使用方法も今後の課題である。最後に心臓移植に到達し社会生活に復帰する中で精神運動発達は非常に重要な要素である。移植後の社会生活能力を評価したところ、複雑先天性心疾患や重症横隔膜ヘルニアの術後に比べ有意に社会生活指数が低く、自閉症スペクトラムも多数認める。今後の適応判定にも影響を及ぼす重要な因子であり、更なる追跡調査が必要と考えている。