第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム6(I-S06)
乳幼児期重症心不全治療の現状と将来の展望

2019年6月27日(木) 16:00 〜 17:30 第3会場 (大ホールC)

座長:小垣 滋豊 (大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)
座長:小野 稔(東京大学医学部 心臓外科)

[I-S06-03] 乳幼児の脳死臓器提供における諸問題  -その背景と制度を振り返る-

荒木 尚 (埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター)

 わが国において脳死下臓器提供が開始されてから20年を経て、年間の臓器提供件数は緩徐ながら増加の一途にある。改正法施行により小児の臓器提供が可能となり、2010年7月17日以降18歳未満の小児の臓器提供は34件(2019年4月23日時点)を数える。これまで18歳未満の小児からの脳死下臓器提供については様々な課題が指摘されてきたが、被虐待児除外の判断や家族への総合的支援に関する疑問が多く見られる。
 平成30年度厚生労働科学研究費補助金免疫アレルギー疾患等政策研究事業(移植医療基盤整備研究分野)「小児からの臓器提供にかかる基盤整備と普及啓発のための研究」では、これまで提供施設名が公表された医療機関を訪問し聴き取り調査を実施、小児の脳死下臓器提供における救急初期診療・法的脳死判定・虐待の除外・家族ケア・小児の意思表示における課題を抽出していく。また日本臓器移植ネットワークのデータを活用し、小児脳死下臓器提供の全体像を捉える。最終的な研究成果が、正確な脳死判定を行うための解説や、より良い家族ケアの実践に参考となる知見の紹介、被虐待児の判断に最低限必要な手続きの解説など、多くの問題解決のために実用的な成果を目指している。また、子どもの脳死について国内外の専門家を招聘し、国際的意見交換が出来るシンポジウムの開催、総合的解説書の作成、取り上げられた課題を一元的に網羅する教育ツールの開発などを行う予定である。わが国の脳死下臓器提供の背景と制度を振り返りながら、近未来の展望について解説する。