[II-MS01-04] 若手心臓血管外科医育成における海外研修の活用;ホーチミンプロジェクト
キーワード:若手外科医, 海外研修, ベトナム
【背景】日本の小児心臓外科システムの限界が語られて久しい。施設の規模が小さく経験値が低い。それでも質を求められるので、ベテランが手術をし、若手は術後管理に明け暮れる。若者は医局を離れ、欧米か規模の大きい国内のセンターに流れる。小規模の施設には人が居着かず益々苦しくなる。現場がいくら不条理を訴えても、政治は聞こえぬふりをするか些末な各論と切り捨てる。若者たちは問うている。「あなたたちは若手の育成を真剣に考えていますか?未来に何を残せるのですか?」と。私自身人を創るべき立場にありながら閉塞感を打破できず、ひとつの活路をベトナム・ホーチミンに求めて10年が経つ。【ホーチミンプロジェクトの概要】筑波大学が2009年にホーチミン事務所を設立した際、私は提携するチョーライ病院との間で手術コラボを企画した。以来年に数回、1-2週間滞在して技術交流を続けてきた。研修医、フェローをこれまでのべ15回ほど派遣し、彼らは行くと必ずリピーターになった。何しろ楽しい。日中手術だけして、患者はICU専門医に委ね、夜な夜な皆でベトナムの酒と料理を楽しむ。道具や材料には事欠くが、工夫をしながら手術を仕上げるのもまた楽しい。彼らの天性のおおらかさに日本人は時に閉口するが、我々ももう少しビジネスライクに手術を楽しみたいものだといつも考えさせられる。【今後の展望】発展途上国のパワー恐るべし。ベトナム人は器用で合理的でチャレンジングである。広く日本の若者が、ベトナムの活力と外科技術とを短期集中型で学んでくる研修システムを遠からず創りたい。筑波大学は若手海外派遣事業を、茨城県はグローバル人材派遣事業を実施して若手の渡航を奨励している。野球と同じで外科技術は世界共通言語なので、英語力やUSMLEを持たずともベトナムでは存分に武者修行ができる。そうした受入れの素地が、10年かかってようやく育まれてきたところである。