[II-OR21-01] メタゲノム解析を用いた川崎病患者口腔内バイオフィルム研究
キーワード:川崎病, メタゲノム解析, バイオフィルム
【背景】近年、口腔内細菌叢の冠動脈疾患への関与が報告されており、川崎病(KD)患者における口腔内細菌叢の定量が病因解明につながると期待される。また、バイオフィルムを形成する歯垢を用いた川崎病の病態解析はこれまでにない。【目的】KD患者の口腔内細菌叢を次世代シーケンサーを用いてメタゲノム解析を行い、急性期病態に関連する口腔内細菌を同定する。【方法】治療前KD患者(KD群)12名, 健常小児(N群) 6名から歯垢検体を採取し、7名のKD患者ではガンマグロブリン療法(IVIG)前・後、退院前で歯垢・血清を採取した。歯垢より抽出したゲノムDNAは、16S rDNAのV3-V4領域を対象にメタゲノム解析を行った。抽出後のデータはa)operational taxonomic unit解析(OTU)による相対的な菌量の算出、b)OTU数(菌量)と血清IL-6値の相関解析、c)Rarefaction解析を行った。【結果】OTU解析では、侵襲性感染症の原因となりうるHaemophilus haemolyticusやHaemophilus sputorumのOTU数(菌量)が、N群に比較して治療前KD群で有意に低値を示した。一方、心内膜炎の原因となりうるPrevotella melaninogenica、Veillonella dispar、Actinomyces naeslundiiのOTU数(菌量)が、N群に比較して治療前KD群で有意に高値を示した。また、Haemophilus haemolyticusやActinomyces naeslundiiと血清IL-6値には正の相関が認められた(R=0.54, 0.66)。Rarefaction解析ではN群に比較してKD群で菌種の多様性が減少した。【考察】KD群で有意に増加あるいは減少する細菌種が観察された。α多様性解析により、N群に比較してKD群で細菌種数が減少するdysbiosis(細菌種の構成異常)が観察された。dysbiosisによって免疫系の恒常性が破綻し、何らかの異常な免疫応答が惹起される結果、炎症性腸疾患や関節リウマチが発症すると推定されている。KD歯垢検体で観察されたdysbiosisは、KDの病因・病態を解明する上で鍵になる可能性が示唆される。