[II-OR21-03] 急性期川崎病大動脈の炎症進展におけるvasa vasorumの関与について
Keywords:川崎病, 大動脈, vasa vasorum
【背景・目的】川崎病は主に冠状動脈を主とする中小型血管が障害されるが、大型血管も急性期にはマクロファージ(Mφ)主体の炎症細胞浸潤が生じることを報告した。経時的に炎症細胞浸潤は、内・外膜から中膜に及び全層に至るが、中膜における細胞浸潤にvasa vasorum(VV)が関与しているか検討することを本研究の目的とした。【対象・方法】川崎病剖検例のうち大動脈標本のある急性期12例を対象とした。HE、EvG染色にて血管構造や炎症細胞浸潤を観察し、マクロファージ(Mφ)マーカーとしてCD163、VVを同定する血管内皮マーカーとしてCD34、Factor VIII related antigen Von Willebrand factorを使用した。【結果】VVは、全例において外膜から中膜下1/2に限局して分布しており、中膜上1/2には認められなかった。また、内腔と連続性のある新生血管も認められなかった。10病日にはVV周囲に高度のMφ浸潤が認められたが、VVから離れた部位ではMφ浸潤は認められなかった。13病日以降に中膜全層に及ぶMφ浸潤がみられたが、VV周囲のMφ集簇は軽度にとどまり、10病日でみられたような高度な集簇は認められなかった。全例を通して、VV周囲の弾性線維の破壊や平滑筋の変性は認められず、また、VVの閉塞や血栓による中膜梗塞など大動脈壁の虚血性変化は認められなかった。【考察】早期の症例にVV周囲の高度なMφ浸潤がみられることから、病初期にはVVを介した中膜への炎症細胞浸潤が生じると考えられる。しかし、大動脈では中膜全層にMφ浸潤が生じている症例がみられるがVVは中膜下1/2にとどまり、VVの変化による大動脈壁の虚血性変化やVV周囲の弾性線維の破壊はみられないことから、病日を経て炎症細胞が中膜上1/2まで浸潤し大動脈全層に至る過程にVVの関与は低いと推測する。