[II-OR22-01] 左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)の左室機能を規定する術前因子の検討
キーワード:ALCAPA, 左室機能, Z score
【はじめに】Anomalous Origin of the Left Coronary Artery from the Pulmonary Artery(以下ALCAPA)は生後2ヵ月頃より肺動脈圧低下に伴い、左冠動脈の順行性血流が維持できず、心筋虚血を来し、心不全症状を発症し、診断されることが多い。ALCAPAの左室機能に関連する因子を検討した報告は少ない。【方法】2004年1月から2018年1月まで当院で治療したALCAPAの9症例を対象とし、術前の左冠動脈主幹部、左前下行枝、回旋枝、右冠動脈のZ scoreと心臓カテーテル検査を用いて、左室機能に関連する因子に関して後方視的に検討した。【結果】在胎週数は40週(39-40)、診断時月齢は3か月(1週間から10歳)、症状は体重増加不良が4例、心源性ショックが1例、無症状 4例(心雑音 2例,スクリーニング異常 2例)であった。術前のカテコラミン使用は5例、補助循環を使用した症例はなかった。術式は冠動脈移植術が7例、竹内法が2例であった。フォローアップ期間は32か月(2か月-9年)であり、術後に左冠動脈狭窄を認めた症例はなかった。術前のLVEF 47%(11-70%)、術後のLVEF 66.5%(31-73%)であり、有意に改善が得られていた(p=0.03)。術前のLVEFは、右冠動脈のZ scoreと正の相関(r=0.72, p=0.037)が見られたが、術後のLVEFとの相関はなかった。術前と術後のLVEFと心臓カテーテル検査の上行大動脈、肺動脈の拡張期圧、上行大動脈圧の拡張期圧と左室拡張末期圧の差、平均肺動脈圧、肺動脈の酸素飽和度、肺血管抵抗との相関はなかった。【考察】ALCAPAの術前の左室機能は、右冠動脈のZ scoreが大きいほど保たれており、右冠動脈から左冠動脈への側副血行路の発達の程度を反映していると考えられた。