[II-OR23-02] 新生児期における心臓手術後急性腎障害のリスク因子と予後に関する検討
キーワード:新生児, 急性腎障害, 心臓手術
【背景】新生児の腎機能は、糸球体、尿細管機能ともにきわめて未熟であるため、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の評価が困難であった。しかし近年、AKIの評価に新生児修正KDIGO基準(n-KDIGO)が提唱され、その有用性が検証されつつある。【目的】新生児期に心臓手術を要した75例(早産・低出生体重児、染色体・遺伝子異常合併児、腎尿路奇形合併児は除く)を対象にn-KDIGOを用いた心臓手術後AKI(cs-AKI)のリスク因子と予後について解析し、有用性を検証した。【方法】cs-AKI群とnon cs-AKI群に分類し、患者背景、チアノーゼ性心疾患の有無、手術時間、Vasoactive Inotropic Score(VIS)を比較検討した。手術難易度はRACHS-1スコアを用い、予後に関しては術後30日以内の死亡を転帰として解析した。【結果】cs-AKI群は51例(68.0%)でn-KDIGO1:27例、n-KDIGO2:14例、n-KDIGO3:10例であった。cs-AKI群はnon cs-AKI群と比較し、VIS高値(P=0.001)、RACHS-1スコア高値(P=0.005)、手術時間の長さ(体外循環時間 P<0.001、大動脈遮断時間 P=0.002)で有意差をみとめた。新生児cs-AKI発症のリスク因子は体外循環時間の長さ(OR 1.01、P=0.001)であった。死亡は6例(8%)でn-KDIGOを用いたAKI重症度分類が独立した予後規定因子であった(OR 17.2、95%CI 2.2-136.4、P=0.007)。【考察】新生児期はNorwood手術や動脈スイッチ手術など侵襲度の高い手術が行われることが多いため、乳幼児期以降と比較し手術に伴う虚血、炎症、有効循環血液量の低下が未熟な腎機能に影響しやすく、心臓手術後AKIを発症しやすいと考えられた。【結語】n-KDIGOを用いた新生児cs-AKIの評価は、AKI発症のリスク因子や予後を鋭敏に反映しており有用性が高い。