第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

周産期・心疾患合併妊婦

一般口演23(II-OR23)
周産期・心疾患合併妊婦

2019年6月28日(金) 11:00 〜 11:50 第5会場 (中ホールB)

座長:城戸 佐知子(兵庫県立こども病院 循環器内科)
座長:田中 靖彦(静岡県立こども病院 循環器科)

[II-OR23-04] バセドウ病合併妊婦の胎児頻脈に対しジゴキシンを導入した1例

關 圭吾, 内山 弘基, 石川 貴充 (浜松医科大学 小児科)

キーワード:甲状腺機能亢進症, 胎児頻脈, ジゴキシン

【背景】甲状腺機能亢進症は妊婦の1000人に1~3人に合併しそのほとんどがバセドウ病である。母体が未治療やコントロール不良の場合、母体のTSHレセプター抗体(TRAb)が胎児に移行して甲状腺機能が亢進し、重症な場合心不全、胎児水腫を発症することがある。今回我々はバセドウ病合併した妊婦の胎児頻脈に対し、血漿交換、ジゴキシン投与などを施行した症例を経験したため報告する。【症例】母体は32歳3経妊3経産。元来バセドウ病の既往があり加療中であったが、多忙により未受診となっていた。妊娠を契機に近医内科を受診し甲状腺機能亢進症状を認めたため妊娠12週時に当院紹介。受診時、TSH 0.003μU/mL、fT4 9.20ng/dL、T3 7.96 pg/mL、TRAb 362IU/L。ヨウ化カリウムを開始したが改善せず、妊娠16週よりチアマゾールを開始。以後も甲状腺機能は改善せず、甲状腺腫大の増悪による呼吸苦が出現。切迫早産も認めたため入院管理とした。妊娠26週時に甲状腺全摘術を施行したが術後もTRAbは高値で推移。妊娠27週より胎児心拍数(FHR)は180bpm以上となり胎児心エコーにて心嚢水の貯留を認めた。胎児の甲状腺は腫大し気道狭窄も認めた。術後に中止したチアマゾールを再開し血漿交換も施行したがFHRは改善せずジゴキシンの投与を開始。その後FHRは160bpm前後に低下し、胎児頻脈は認めなかった。胎児の心嚢水は徐々に減少し消失し甲状腺腫大も改善した。妊娠34週1日に陣痛発来したため帝王切開にて出生(男児2102g、Apgar score 5/8点[1/5分値])。児は出生後、気道に異常なく心不全症状も認めず一時的に甲状腺機能亢進症状を認めたが、徐々に改善し正常化した。【考察】胎児の甲状腺機能亢進症による頻脈の管理には抗甲状腺薬の投与が施行されるが、効果がない場合に本症例のように抗不整脈薬の投与なども検討されると考えられた。