[II-OR24-04] 左側相同、下大静脈欠損例における肝静脈-肺動脈(HV-PA)ルートの検討
Keywords:左側相同, 下大静脈欠損, 肺動静脈奇形
【背景】機能的単心室(SV)、左側相同(LI)、下大静脈(IVC)欠損例ではTCPC到達後も肝静脈(HV)から肺動脈(PA)への不適切な血流分配による肺動静脈奇形(PAVM)の発生がしばしば問題となる。【目的】当院におけるSV、LI、IVC欠損例のHV-PAルートを振り返り、最適なHV-PAルートを検討する。【方法】1995年-2018年に当院におけるSV、LI、IVC欠損のTCPC到達例をカルテから後方視的に検討。【結果】該当症例10例中、TCPC後経過を追跡不能の1例を除外した9例を対象。1例がintra-extra、その他全例がextra cardiac conduit法によるTCPCを施行。fenestration作成は1例。手術時年齢は1-12歳(中央値4)、観察期間2-21年(中央値6)、遠隔期死亡は2例。解剖学的に奇静脈もしくは半奇静脈を受ける上大静脈(dominant SVC、以下dSVC)とHVが同側で心尖(apex)が対側をS-H群、dSVCが対側でapexとHVが同側をA-H群、dSVCとapexが同側でHVが対側をS-A群、dSVC、apex、HVが同側をS-A-H群とした。内訳はS-H群3例、A-H群1例、S-A群1例、S-A-H群4例で、S-H群、H-A群では4例全例でPAVM発生を認めなかったが、S-A群、S-A-H群では5例中4例(80%)でHV血流の左右PA不均衡を生じていた。新規発症のPAVMが問題となったのはS-A群1例、S-A-H群2例で、S-A群、S-A-H群の2例にそれぞれ無名静脈(INV)、dSVC近傍への外科的導管位置修正を行った。S-A-H群の他の1例は未だPAVM発生は認めないものの左右PA血流不均衡のため導管ルートを変更する予定である。【考察】dSVC、HVの血流量はそれぞれ静脈還流量の50%以上、20-25%程度とされており、HV血流を対側肺へ流すためにはHV-PAルートをなるべくdSVCに近づけるもしくはHV血流を直接dSVCへ流すことが必要と考えられた。【結語】S-H群、H-A群では従来通りのextra cardiac conduit法によるTCPCで問題ないが、S-A群ではINV、bilSVCの場合はdSVC近傍への導管吻合、S-A-H群ではHV-奇静脈吻合を初回から行う方針を検討中である。