[II-OR27-04] 肺血管拡張薬はFontan術後症例のTranspulmonary pressure gradientを低下させ安静時心係数を増大させる
Keywords:肺血管拡張薬, Fontan, 肺高血圧
【背景】Fontan(F)術後の肺循環はbottle neckとしてその予後を規定する極めて重要な因子であり、同部位への介入なくしてF術後症例の予後改善を図るのは困難である。近年、多種類が市販される肺血管拡張薬(PVD)はこのbottle neckへの好ましい効果が期待されるが具体的な功罪はあきらかではない。【目的】F循環におけるPVDの血行動態的効果を明らかにする。【対象と方法】2016年11月から2018年10月にF術後半年のカテーテル検査(カテ)を行ったPVD導入19例(P群:4.7±2.8歳),および基礎心疾患・初回姑息術を一致させたPVD非導入例19例(Control:C群:4.1±2.3歳)。F術前後の心カテ指標を中心に後方視的に比較した。【結果】Fontan手術時年齢、体重、性別、体肺短絡側副血行塞栓術施行例の割合に群間差は認めなかった。PVDはPDE5阻害薬単独13例(68%), ETB単独1例(5%)、2剤併用5例(26%)。導入時期はF術前10例、後9例。F術前カテでは平均肺動脈圧(mPAP)・左房圧(LAP)、体血流(Qs)に有意な差を認めなかった(7.4 vs 7.5mmHg, 4.9 vs 4.2mmHg, 3.6 vs 3.3 L/min/m2)。F術後半年時点のmPAP(8.3 vs 8.4 mmHg)も有意な差を認めなかったが、P群ではTrans-pulmonary pressure gradient(3.6/5.0, p=0.016)が低く、LAPとQsは有意に高かった (4.7/3.5mmHg, 3.5/2.7L/min/m2)。心室駆出率(61/59%)、SaO2(95/95%)に差はなかった。F術前からF術後半年にかけてのmPAPの変化はP群+0.84mmHg vs C群+0.94mmHgとP群で小さい傾向を認めた。【考察と結論】Glenn手術を経た3 staged approachにより心室前負荷の急減を避けることでF術成績が改善したことは記憶に新しい。PVDはF循環のbottle neckを一定程度開放し流量を増大せしめF術後心室前負荷減少を最小限にとどめることで適応を促進するかもしれない。また単独ではCVP軽減まで力は及ばないが利尿剤と組み合わせることでF術後遠隔期の腹部臓器障害を軽減できる可能性がある。