[II-OR28-04] ダウン症の肺血流増加型先天性心疾患は術後も肺動脈圧が高い
キーワード:ダウン症, 肺高血圧, 肺血流増加型心疾患
【目的】肺血流増加型先天性心疾患(CHD)修復術後の肺動脈圧をDSと非ダウン症(NDS)で比較する。【対象】2007年9月から2018年12月の間に心内修復術後評価として心臓カテーテル検査を行ったCHD135例(DS43例、NDS92例)。対象疾患は心室中隔欠損(VSD)、房室中隔欠損(AVSD)、心房中隔欠損(ASD)、両大血管右室起始(DORV)とし、ファロー四徴、肺動脈狭窄合併例は除外した。【方法】気管内挿管全身麻酔下で心臓カテーテル検査を行い平均肺動脈圧(MPAP)、Fick法で入血管抵抗(Rp)、体血管抵抗(Rs)およびRp/Rsを求め、DS群とNDS群を比較した。検定はt-検定とFisher’s exact test、カイ二乗検定を用いp<0.05を有意とした。【結果】修復術時年齢、心カテ時年齢、修復術から心カテまでの日数の中央値はそれぞれDS群で0.6歳、1.8歳、397日、NDS群0.4歳、1.6歳、384日であり、両群間に有意差はなかった。MPAP、Rp、Rp/Rsの平均値はそれぞれDS群で18.5mmHg、2.8WUm2、0.19であり、NDS群で16.3mmHg、2.1WUm2、0.10といずれもDS群で有意に高値であった(p=0.01, p=0.01, p=0.004)。MPA20mmHg以上の肺高血圧であったのはDS群9例(20.9%)、NDS群6例(4.3%)で有意にDS群に多かった(p=0.02、オッズ比3.79)。心カテ時に肺動脈拡張薬を内服していたのはDS群で11例(25.6%)、NDS群4例(4.3%)で有意にDSに多かった(p<0.001、オッズ比7.56)。主病名はDS群でVSD22例、AVSD12例、ASD7例、DORV2例、NDS群でVSD71例、AVSD7例、ASD7例、DORV7例であり、DS群でAVSDが、NDS群でVSDが有意に多かった(p<0.05)。VSDに絞った検討でDS群はNDS群に比べ心カテ時年齢が有意に低く、MPAPとRp/Rsが有意に高かった(p<0.05)。【考察】DSでは肺動脈拡張薬内服例、肺高血圧例のみならず正常範囲のMPAPもNDS群に比べ高い傾向にある。AVSD数による修飾も考えられるが、VSD単独でも同じ傾向を認めDSの肺血管床を反映していると考える。