[II-OR29-02] iPS細胞から分化させた血管内皮細胞および平滑筋細胞は21トリソミーにおける肺動脈性肺高血圧症の細胞、分子レベルでの病態を明らかにする
Keywords:肺動脈性肺高血圧症, 21トリソミー, iPS細胞
【背景】肺動脈性肺高血圧症(PAH)では、肺血管を主に構成する平滑筋細胞(SMC)と血管内皮細胞(EC)に機能異常があることがin vitro、in vivoの研究で示唆されている。一方で21トリソミー(T21)はPAHを合併しやすいことは知られているが、SMC、ECの細胞機能についての研究は未だなく、PAH発症の細胞・分子メカニズムについては解明されていない。【目的】T21患者由来のiPS細胞からSMC、ECに分化させ、その基本的なcell physiologyや遺伝子発現プロファイルを明らかにすることでT21におけるPAH発症メカニズムの解明および特異的な治療法の開発を目指す。【方法】正常対照群を正常核型(WT)、cre/loxPシステムを用いてT21をダイソミーに修正したiPS細胞(cDi21)の2ライン、疾患群をT21(T21-1, T21-2)の2ライン、計4ラインを用いた。それらを既報のプロトコールに従いSMC、ECに分化させ、細胞の physiology(増殖能、アポトーシス、遊走能など)、ミトコンドリア機能について18%酸素と1%酸素の2つの条件下で培養し評価した。また次世代シークエンサーによるRNA-seqを行い網羅的な発現解析を行った。【結果】iPS細胞から分化させたSMC、ECをSMMHC、vWfで免疫染色を行い目的の細胞に誘導できたことを確認した。1%酸素下ではWTと比較してT21のSMCの増殖能は高く、ミトコンドリアの産生するROSが少なく、T21のSMCは低酸素下で異常増殖する傾向が認められた。またRNA-seqでは、SMCにおける発現解析の対象遺伝子26255のうちFold Changeが1.5以上、もしくは-1.5以下のものが651個あり、今後pathway解析などで病態解明を行う予定である。ECに関してもSMCと同様の実験を行っている。【結語】iPS細胞由来SMC、ECの機能解析はT21におけるPAH発症メカニズム解析に寄与する可能性がある。