[II-P38-02] Amplatzer Septal Occluder留置後に生じた両側性の冠動脈瘻の長期経過
キーワード:冠動脈瘻, 治療後合併症, 心房中隔欠損症
【背景】心房中隔欠損症に対するカテーテル閉鎖(以下TC-ASD)の合併症として、冠動脈瘻の報告はない。以前我々はTC-ASD後に冠動脈瘻を形成した2例を本学会で報告したが、今回その長期経過後に冠動脈瘻が自然閉鎖した症例を経験したので報告する【症例】50歳女性、43歳時に26mmの欠損孔に対して30mmのAmplatzer septal occluderを留置。尚、術前の冠動脈造影では冠動脈瘻はなかった。留置1年目の精査で経食道心エコー図検査でデバイス周囲に網目状の血流が確認されたため心穿孔を疑い心臓カテーテル検査を施行した。Sinus Node branchおよびseptal branchからデバイスに向かって新生血管が増生し左右心房へ還流していた。Qp/Qsは1.42と上昇していたが冠動脈径の拡大や心筋虚血の所見はないため経過観察の方針としたが、患者は外来通院を自己中断した。治療から約7年後に安静時胸痛のため当院を再受診、安静時および運動負荷時ともに虚血所見はなかったが冠動脈瘻の評価のため冠動脈造影を施行した。左冠動脈瘻は完全消失し、右冠動脈瘻もごく小さいものになりQp/Qsは1.1とほぼ正常化していた。【考察】当施設群でTC-ASDを施行した600例以上のうち治療後に冠動脈造影もしくは大動脈造影を施行していた症例は約200例あり、そのうち治療前に認めなかった冠動脈瘻が出現した症例が本例を含め2例存在した。これまで同様の事象の報告がなく病態生理が不明であるが、一般的に新生血管は脆弱であり穿孔のリスクとなる可能性があると考えていた。しかし本症では特に治療を行わず新生血管は自然閉鎖していた。閉鎖時期・機序ともに不明であるものの、冠動脈瘻はデバイス閉鎖後の内膜化などの自然治癒過程を見ているのかもしれない。