[II-P39-02] Fontan術後遠隔期に多発性脾動脈瘤を認めた多脾症候群の1例
キーワード:フォンタン術後, 脾動脈瘤, フォンタン関連肝疾患
【背景】Fontan関連肝疾患(FALD)の病態は依然として不明な点も多いが、高い中心静脈圧と非拍動性の肺血流が二次的に肝後負荷を上昇させ、心拍出量の減少も加わって、最終的に肝硬変、静脈瘤、門脈圧の上昇を生じると考えられている。また、Fontan術後とは無関係に、門脈圧上昇例では脾動脈瘤の発生が報告されている。【症例】27歳, 女性。多脾症候群, 単心室・肺動脈閉鎖症。6歳時にTCPC術(心房内導管14mm)を施行された。NYHAII度で生活していたが、21歳頃より腹水が出現し、心臓カテーテル検査で導管狭窄と中心静脈圧上昇があり、24歳時にTCPC再手術(心外導管20mm)を施行された。術後1年時の腹部超音波検査で径60mm大の巨大脾動脈瘤が発見された。多量の腹水が貯留しており外科的治療はリスクが高いと判断し、動脈瘤に対するコイル塞栓術を施行された。その後、外来で定期的に腹水ドレナージを行い経過観察されていたが、26歳時に意識消失発作と貧血が出現し、造影CTで脾内出血が疑われた。塞栓術施行目的に施行された血管造影検査では、脾門部の脾動脈の脾静脈への穿破による脾動静脈瘻と考えられ、同部位へ入る動脈に対して塞栓術を施行された。この際、他の脾動脈にも複数の脾動脈瘤が確認された。これらに対しての塞栓術を考慮したが、他臓器の虚血を生じる可能性が高く治療は断念した。【まとめ】Fontan術後にみられるFALDでは、門脈圧上昇の結果、多発性に脾動脈瘤が生じる可能性がある。一般的に、脾動脈瘤は破裂した場合の死亡率が極めて高く、中等瘤以上(20mm以上)や増大傾向を示す例では早期の治療介入が推奨されるが、FALDを伴う症例では難治性の腹水や肝硬変の合併により外科的治療介入が困難で、カテーテル治療に関しても本症例の様な多発例では根治は困難であることが多い。フォンタン術後症例の診療において、脾動脈瘤は認識すべき重篤な致死的合併症の一つと考えられ、本症例を報告する。