[II-P39-04] フォンタン術後の体静脈側副血行路と肺血管拡張剤の有用性
キーワード:Fontan, systemic venous collateral, pulmonary vasodilator
【背景】Fontan(F)術後遠隔期の問題点の一つに体静脈側副血行路(systemic venous collaterals: VVc)に伴うチアノーゼ増悪がある。一方、F循環では体静脈圧が持続的に肺循環を維持できるようにする必要があり、肺血管拡張剤(D)の有用性の報告が散見される。【方法】F術後患者におけるVVc合併の危険因子を検討し、Dの効果について検討する目的で、当科でフォロー中のF術後患者27例を対象に診療録から後方視的に検討した。心カテーテル検査(心カテ)時の大動脈酸素飽和度が95%未満かつ体静脈系の造影で左房・肺静脈に繋がる異常な血管を認めるものを有意のVVcと定義した。F術前後の心カテ時のパラメーターなどについて、VVc有無で比較検討した。また同じ血行動態でDの使用前後で心カテを施行している3例で各パラメーターの変化を検討した。【結果】27例中無脾5例、多脾1例、主心室が右13例。現時点で全例TCPC(extracardiac法)施行。Glenn術を経ずF術施行3例、心房肺動脈連結術施行し後にTCPC転換術施行1例。2例はfenestrated F施行もその後fenestration自然閉鎖。蛋白漏出性胃腸症・ショック肝合併1例。27例中11例(40.7%)にVVcを認めた。VVc有無でF術前の肺体血流比(Qp/Qs)(0.71±0.22: 1.00±0.43)、肺動脈係数(PAI)(225.7±58.9: 295.7±100.8mm2/m2)、肺動脈狭窄や低形成既往(54.5%: 12.5%)に有意差を認めた(p<0.05)。また、D投与により肺血管抵抗、平均肺動脈圧、transpulmonary pressure gradientは低下し、心係数は増加していた。F術後1年以内に肺動脈圧高値などの理由でD投与が行われた6例の内VVcを合併したのは3例で、1例は内服1年以内に合併し、1例は術後1年で内服中止しその3年後に合併していた。【結論】VVc合併のリスク因子としてF術前のQp/Qs低値、PAI低値、肺動脈狭窄既往が挙げられる。F循環においてDは肺血流を促進させる点において有用と考えられるが、今後の症例蓄積による検討が必要である。