[II-P40-02] 僧帽弁形成術後における成長にともなう僧帽弁形態の変化
キーワード:僧帽弁形成術, 僧帽弁輪径, 心エコー
【背景】近年、成長に伴う僧帽弁輪の大きさのみではなく弁形態の変化の詳細が明らかにされつつある。小児期の僧帽弁形成術には弁輪縫縮や人工腱索が多く用いられるが、成長に与える影響についての報告は少ない。【目的】僧帽弁形成術が成長にともなう弁形態変化に及ぼす影響を検討する。【対象・方法】当院で2000年1月から2018年12月までに、僧帽弁に対する手術介入を行った133例のうち、再手術・僧帽弁置換・経過観察中断となった症例を除いた85例(男児43例)を対象とした。最終フォロー時の心エコー検査で僧帽弁輪径(長軸像、四腔断面像)と僧帽弁輪から乳頭筋までの距離を計測し、術式による差異を検討した。【結果】手術時平均年齢1.85歳(29生日-12歳)、体重9.2kg(2.6-35kg)、僧帽弁単独手術29例、同時手術例ではVSD閉鎖46例(うち大動脈狭窄修復1例)、左冠動脈移植6例、ASD閉鎖3例、大動脈弁形成1例であった。術式は弁輪縫縮(MAP)80例(両側52例、片側28例)、弁形成53例(人工腱索36例)であった。最終フォロー時の平均年齢10.1歳、術後観察期間8.2年、平均身長132.7cm、体重33.9kg、BSA 1.11であった。MRは軽度以下が80例、中等度5例、重度0例、平均僧帽弁最大流入速度1.17m/sで有意な狭窄はみられず、左室拡張末期径103.5%対正常であった。平均僧帽弁輪径は長軸像-1.19SD、四腔断面像-0.89SDであり、両側MAP/片側MAP/MAPなしでは長軸像-1.33/-1.03/-0.62SD、四腔断面像-1.07/-0.53/-0.91SDと有意差はないものの両側MAP群で小さな傾向がみられた。僧帽弁輪から乳頭筋までの距離と僧帽弁輪径(四腔断面像)の比は平均0.86で、人工腱索あり/なしでは0.81/0.90(p=0.04)と人工腱索あり群で弁輪径に比して弁輪から乳頭筋までの距離が短かった。【考察】僧帽弁形成術後の機能的な成績は良好であるが、弁構造には影響を及ぼしている可能性がある。今後は3次元心エコーを用いたさらに詳細な検討と長期的な経過観察が必要である。